【フロントランナー 地域金融】飛騨信用組合の電子地域通貨の取り組み(6)

「さるぼぼコイン」提供開始の記者会見
「さるぼぼコイン」提供開始の記者会見【拡大】

 ■フィンテックの先行導入で差別化

 飛騨信用組合では、電子的統計を活用した観光名所とのタイアップ、加盟店間の資金の流れを踏まえた融資提案・コンサルティングサービス提供など、電子地域通貨の強みを生かし、「さるぼぼコイン」のさまざまな展開を検討していく予定だ。

 フィンテック(金融とITの融合)社会の進展によって、数年後には同様のシステムが近隣に登場することも予想されるが、それが一般に浸透していけばいくほど、業界初の取り組みという先行投資から得られる知見は貴重なものになる。

 さるぼぼコインは、単体の収益ですぐに結果が出る事業ではない。だが、将来的な影響力はとても大きいものになると大原誠理事長はみている。

 「さるぼぼコインを飛騨高山における決済のメーンツールにできれば、当組合だけでなく、地域経済の循環・発展に大いに貢献できるものと考えています。競合参入があった場合でも、フィンテック導入の先行メリットで今後進むべき道の判断精度も高まっていくでしょう。金融界でいえば、信用組合が手掛けた初の事例というのも、一つの大きな足跡になったのではないでしょうか」と大原理事長は話す。

 また、古里圭史理事も、「さるぼぼコインというインフラが根付けば、組合としても挑戦できる分野が広がります。職員にとっては、アプリで得られた情報をもとに加盟店への経営アドバイスにトライするなど、個々人のスキルアップにも役立てることができるでしょう。コストになっているともいわれる従来型の対面営業のメリットと電子情報活用の相乗効果が、信用組合だからこそ実現可能な、フィンテックによる差別化ではないでしょうか」と、今回の取り組みの意義を強調する。

 地域経済の下支え、そして組合の持続的成長のための新たな一歩が引き起こすインパクトの期待値は非常に高い。飛騨信用組合の新たな挑戦は始まったばかりだ。

                  ◇

 (編集協力)近代セールス kindai-sales.co.jp