【フロントランナー 地域金融】東邦銀行郡山営業部の黒澤竜平調査役(2)

黒澤竜平さん
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 ■事業承継を切り口に新規開拓展開

 全国的に経営者の世代交代が課題となる中、東邦銀行郡山営業部も、事業承継を切り口として積極的な新規開拓を展開している。承継対策が手付かずの企業は多く、黒澤竜平さんは、経営者が60歳以上なら必ずといってよいほど声掛けをしている。自社株評価額の試算を勧めるほか、遺言信託の紹介も精力的に行う。いきなりそんなことを口にして大丈夫なのか、という疑問もあるかもしれないが、経営者にも少なからず自覚はある。7~8割は好意的な返答があり、関心のない人はほぼいないという。

 「今のうちから準備しておけば、いざ相続となったとき、遺されたご家族も会社の従業員の方々も助かりますから、これも重要なソリューション提案の一つだと考えて取り組んでいます」と黒澤さんは話す。

 提案するうえでは、会社の経営内容や資産の内訳など、詳細な情報が入手できる。対策着手に至らなかったとしても、提案を行う中で存在感を示せるため、その後の資金の相談をしてもらいやすくなり、新規融資取引にもつながる。

 融資以外にも視野を広げ、何か発見があれば即行動に移す姿勢は既存先に対しても同様だ。

 ある食品製造業の工場見学の際、見かけないパッケージを目にしたことがビジネスチャンスとなった。そのパッケージは新商品用だったため、東邦銀行が共催するフードビジネスフェアを紹介。黒澤さんはここから一歩踏み込んで、前任店で担当取引先だった卸売業者とのマッチングに動いた。

 事前に聞いたターゲット層や希望する販売ルートなどを元に検討し、フェア会場で直接紹介すると、「黒澤さんが仲立ちしてくれるなら信頼できる相手だ」と、商談は成立。さらに卸売業者がバイヤー向け見本市に出品したため、大型スーパーでの取り扱いも早々に決まった。

 マッチングには融資は伴わなかったが、経営者との距離は縮まり、「信頼できる金融機関担当者」として従業員に紹介してもらい、複数から住宅ローンなどの取引を獲得できた。

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 (編集協力)近代セールス kindai-sales.co.jp