ベンチャー成長に新たな資金調達手段 株式投資型クラウドファンディングが10億円突破 (3/3ページ)

エメラダ・エクイティを通じて資金調達した地ビール会社の紹介動画の画面
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 柴原祐喜最高経営責任者(CEO)がシステムと経営コンサルタント、大浦氏がマーケティングやシステムを専門分野とする日本クラウドキャピタル。公認会計士出身の出縄社長が投資性よりも企業支援を重視し、株式投資型CFを、地元企業などを応援する事業パートナーづくりのツールと位置づけるDANベンチャーキャピタル。

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 ■市場拡大に魅力的なリターン必要

 一方、エメラダはベンチャーキャピタルなどプロの投資家が出資しているベンチャー企業を対象に、議決権のない新株予約権を発行し、投資家が新規上場やM&A(企業の合併・買収)でリターン(資金回収)を得るスキームを明確に示すなど、「三者三様」の運営スタイルも、株式投資型CFの参加者拡大につながっているもよう。

 業界関係者によれば現在、他に数社がサービス運営への参入を検討しており、企業、投資家双方の選択の幅がさらに広がりそうだ。

 もっとも、始まったばかりの新手法には課題もある。

 企業金融や証券投資に詳しい桃山学院大の松尾順介教授は「株式投資型CFには、経営陣やビジネスモデル、サービスに共感して投資するというファンサポーターの側面がある」と評価した上で、「配当もない、いつまでも上場しないでは、寄付型と同じ。市場の広がりには、新規上場による投資家へのリターンの実績を積み上げる必要がある」と指摘する。

 情報開示の量や技術評価の難しさなどベンチャー企業のリスクを克服し、優良な投資先をどう拡大させていくか。サービス運営会社の力量が問われるのはこれからだ。(大塚昌吾)

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【用語解説】株式投資型クラウドファンディング

 ベンチャー企業の新たな資金調達手段で、未公開株を発行し、1億円未満を上限に広く資金を集められる。寄付型や融資型CFに対し、株式投資型は2015年5月の金融商品取引法の改正で認められた。第1種少額電子募集取扱業者の承認を受けたサービス運営会社が、登録した投資家にインターネット経由で出資を募る。リスク回避のため、投資額は制度上1社50万円まで。サービス運営会社は、手数料収入を得る仕組み。

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 ■参入3社のサービス規模  

 【日本クラウドキャピタル】

  ・参入時期    昨年4月

  ・投資家登録数  8500人

  ・調達総額    9億7600万円

  ・今年末累計目標 40億円

  ・代表の出身母体 システム、経営コンサルタント

 【DANベンチャーキャピタル】

  ・参入時期    同9月

  ・投資家登録数  500人

  ・調達総額    9200万円

  ・今年末累計目標 3億3000万円

  ・代表の出身母体 公認会計士

 【エメラダ】

  ・参入時期    同11月

  ・投資家登録数  5000人弱

  ・調達総額    1億8000万円

  ・今年末累計目標 10億円

  ・代表の出身母体 投資銀行部門