【生かせ!知財ビジネス】特許庁・金融機関支援の行方(下)

 ■新たな価値創造がポイント

 特許庁の「中小企業知財金融促進事業」が今年度で終了するのに伴い、金融機関向け知財関連支援の行方が注目されているが、「知的財産推進計画」など国としての知財施策の方向性を議論する内閣府の知的財産戦略本部でも、その重要性に着目している。

 知的財産戦略本部はこのほど、知財のビジネス価値評価検討タスクフォースの報告書をまとめ、この中で“価値創造メカニズム”の概念を整理し、普及用のツールとして「経営デザインシート」のひな型を公表した。

 同報告書は、企業のビジネスが大量生産のための大規模設備など有形資産が重要だった20世紀型から、多様化する価値観や高度化する技術に対応したビジネスモデルをデザインする21世紀型へと移行していく中、企業自身が知財を中心とする無形資産をどう把握し、その活用を設計して新たな価値をどう創造するかがポイントになることを示した。裏を返せば、企業へ資金を提供する金融機関でも同様の視点で企業を評価し、支援を考えることが重要になっているということだ。

 内閣府知的財産戦略推進事務局の仁科雅弘参事官は「基本は知財単体の価値ではなく知財のビジネス上の価値、知財と価値創造との関係を定性的にみること。現状と将来の方向性や戦略までを含む価値創造メカニズムを把握することだ」と、この概念と経営デザインシートの企業での活用を呼び掛ける。

 普及策として、金融庁へは金融機関の事業性評価の中で、特許庁へは知財ビジネス評価書や伴走支援など金融機関向け支援の中での活用を進めることや、企業向け研修での啓蒙(けいもう)などを既に打診した。金融機関が知財と金融の関係を学べる場は少ないだけに、特許庁が金融機関を支援する活動は今後も重要になる。具体例が出てくれば同タスクフォースで検証し、バージョンアップを図る。

 ところで金融機関は、自らが本来持っていた金融仲介機能への危惧感を本当に持っているのだろうか。金融機関向け研修会社の担当者は「投信や保険の勉強が先で財務の勉強さえ後退ぎみにみえる」と言う。21世紀の現在、金融機関は自らの価値創造を、手数料ビジネスだけに見いだしているかのようである。

 価値創造メカニズムの概念と経営デザインシートの活用は、まず金融機関自らで実践してみると良いのかもしれない。(知財情報&戦略システム 中岡浩)