産業界で注目集めるVRの最新事情 デルが「VRでつながるねん」セミナー開催

デル日本法人の最高技術責任者、黒田晴彦氏
デル日本法人の最高技術責任者、黒田晴彦氏【拡大】

  • ヘッドマウントディスプレーでレクサスの3Dモデルを見る参加者

 仮想現実(VR)技術を産業分野で活用する動きが活発になっている。包括的なITソリューションを提供するデルの日本法人(本社・川崎市)は4月24日、大阪市でセミナー「VRでつながるねん」を開催した。最新のIT技術活用について話を聞こうと幅広い業界から90人以上が集まり、会場は満席となった。基調講演を行った同社の最高技術責任者・黒田晴彦氏は「昨年VRの勢いに火が付いた。今年は燃え盛るほどになるだろう」と確信に満ちた口調で語った。

 現在、ヘッドマウントディスプレーを装着するVR技術はオフィスで、眼鏡型端末などで現実の映像に画像を重ねて表示させるAR(拡張現実)技術は工場などで活用されている。現状を踏まえ黒田氏は「VRとARは人を通してインフォメーションテクノロジーとオペレーションテクノロジーを繋ぐ結節点になる」と話す。

 またVRが画像を見るだけではなくなったとして、人間が行けない場所に操縦者と同じ動きをする作業用ロボットを送り込み、ロボットが触れたものの温度をセンサーで人間に伝える研究が進められていると語った。

 だが、最新テクノロジーやIoT(モノのインターネット)をVRで活用しようとすると、従来のクラウドでは対応できなくなる恐れがある。大量のデータによって映像の送受信やロボットの操作に遅延が起きる可能性も否定できない。

 そこで黒田氏が訴えたのがクラウドを補完する「フォグ」の重要性だ。フォグとはロボットやカメラなどのデバイス(機器)の近いところで一部の情報処理を行い、クラウドに集中する負荷を分散させる仕組み。雲(クラウド)よりデバイスに近いというイメージで霧(フォグ)と呼ばれる。

 黒田氏は3月にアメリカ国立標準技術研究所が、フォグと、フォグ内でデバイスにより近い「ミスト」の概念を改めて定義したと述べ、「産業でVRを使うにはミストやフォグが必要。現場に置かれたコンピュータやクラウドが全て繋がるようになると仕事のノウハウが蓄積され、新たな『知』が創出されていく」と見通した。日本のものづくりを発展させるVRとクラウド、そして産業向けVRの環境を信頼性の高いハードウェアで実現するデルのようなメーカー。いずれも新たな「知」の創出には欠かせない柱になるだろう。デルは日本バーチャルリアリティ学会やVR研究会での活動を通してVRと産業の発展に貢献していくという。

 セミナーではトヨタ自動車の栢野(かやの)浩一氏も講演し、「モノづくりは、人づくり」であるというポリシーのもと、若いエンジニア向けにVRで自動車のレギュレータを取り外す実習を行った例を紹介した。

 昨年には多治見サービスセンター(岐阜県)の講師とフィリピンなど3カ国にいるエンジニアたちが同時にVRを使い、仮想空間で新型レクサスの技術講習会が開かれた。先進的な取り組みは各地に拠点を持つ製造業に影響を与えそうだ。(提供:デル株式会社)