【遊技産業の視点 Weekly View】次世代につなぐべきカタチとは


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 □藤商事常務執行役員開発本部長・松下智人

 私が入社して間もなくの遊技業界を振り返ると、参加人口はおよそ3000万人、市場規模も約30兆円といわれていた。パチンコホールには多くの大人が立ち寄り、日常のストレス発散にとどまらず、訪れる人々が気軽に言葉を交わし、遊技を通じて楽しい時間を共有する大人のコミュニティーとして機能していた。また遊技機を見ても、羽根モノ、セブン機、一発機などバリエーションに富み、個々の財布の中身に応じて楽しむことができる環境が整っていた。一方で、業界全体はダーティーなイメージが強く、就職先としての人気はことさら低かったと記憶している。

 このように大衆娯楽としての特徴を色濃く打ち出していた時代から、やがて遊技者一人一人が遊技機と向き合い、大勝ちを求める傾向を強めていった。遊技機も、コンテンツが違うだけで似たようなゲーム性のものが市場を席巻。偶然の勝ち負けに頼ったギャンブルに近いものとなり、結果、参加人口は1000万人、市場規模も20兆円を切るまでシュリンクした。しかしながら、産業として規模を拡大していく背景で、家業から企業へのシフトが急速に進み、上場を果たす企業も出てきた。業界内就業人口も50万人を超えるといわれるなか、積極的にCSR活動に取り組む企業も増え、リクルートでも大学生を中心に新卒採用が積極的かつ継続的に行われるようになり、毎年多くの若者が業界の次世代を担うべく関連企業に就職している。

 そして、いまわれわれは「次世代にどのように、どのような形でバトンを渡していくべきか」、その答えを歴史から、また時代のニーズや社会の価値観から探り、導かなければならない。カジノを含む日本版IR実現への動きの中、大衆娯楽への再転換は不可欠ではあるが、果たして“これからの時代”の大衆娯楽とはいかなる姿であるべきなのか。30年前とは人々の価値観もレジャーに対する意識も、さらにはわれわれ企業の経営環境も大きく異なる状況で、パチンコホールやメーカーはじめ、業界に携わる全ての人々が協働しながらこれを模索し、「時代に適したパチンコ・パチスロの在り方」を再構築する必要がある。

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【プロフィル】松下智人

 まつした・ともと 1971年生まれ。89年藤商事入社。経理部、総務部を経て2009年開発本部へ異動。16年常務執行役員開発本部長に就任、現在に至る。兵庫県尼崎市出身。