【eco最前線を聞く】バイオマス発電に間伐材を有効利用

八戸バイオマス発電では間伐材など年間約13万トンの木質チップを燃料として活用する=青森県八戸市
八戸バイオマス発電では間伐材など年間約13万トンの木質チップを燃料として活用する=青森県八戸市【拡大】

 □住友林業 環境・エネルギー部グループマネージャー 小山聡氏

 住友林業は住友大阪セメント、JR東日本と共同で八戸バイオマス発電(青森県八戸市)を設立、営業運転を開始した。住友林業グループは再生可能エネルギーの中でも木質バイオマスの利用に力を入れており、今回のプロジェクトは「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)」を活用した発電事業。地元の間伐材といった木質チップやパームヤシ殻を燃料として活用し、約2万7000世帯分の電力を供給する。資源環境本部環境・エネルギー部の小山聡グループマネージャーに同事業を推進する狙いなどについて聞いた。

 ◆相乗効果で地域活性化

 --木質バイオマス発電に取り組む目的は

 「住友林業の祖業である林業の活性化が根底にある。このため可能な限り国産材を集荷して、未利用になっている木材をエネルギーとして活用するようにしている。その考えに基づき、2016年から17年にかけては紋別市と苫小牧市(いずれも北海道)で運転を開始した。このほか建築廃材などを主燃料とした都市型の『川崎バイオマス発電所(川崎市川崎区)』を稼働させている。八戸は当社グループとして国内4番目の発電事業だ」

 --事業を進めることは地元に対し、どのような形で貢献するのか

 「搬出コストが合わないことから、切り捨てられた間伐材は山の中に放置されているといった問題がある。放置すれば食害問題が顕在化し、森林環境が悪化。生育に悪影響を及ぼす。また、大雨が降った場合、間伐材が一気に川に流れて大災害の原因になる」

 「木質バイオマス事業に取り組めば山がきれいになり、伐採作業に伴う雇用やトラック輸送用の道路整備といった相乗効果が生まれる。定期点検も年に1、2回行うので多くの人が地元に集まり、宿泊や飲食などを通じて地域活性化につながる」

 ◆来年3月までに200メガワット

 --政府は再生可能エネルギーへのシフトを一段と加速しているが

 「国産材を活用したバイオマス発電の普及は限定的だと思う。日本の山は急峻(きゅうしゅん)で伐採に多大な費用が発生するため、発電コストを引き下げるのは難しいからだ。一方、木質バイオマスを増やせば国産材の価格が上昇し山にも還元できるとの意見もあるが、それで山がよみがえることは難しいと考えている」

 --再生可能エネルギーを活用した発電事業の方向性は

 「八戸での事業を加えて累計の発電規模は約100メガワットとなり、約20万9000世帯分の電力を供給している。今後もバイオマスを中心に事業を進め、19年3月までに200メガワット規模まで拡大する方針だ。また、山間地での風力発電の検討も進めていく。当社は北海道や和歌山、愛媛、熊本県などに山を所有しており、こうした場所を活用して取り組んでいきたい。事業化に着手すれば伐採が適切に行われるようになり、林道整備も進み、施設の維持管理など雇用面でも寄与する。山の活性化に貢献できるはずだ」(伊藤俊祐)

                   ◇

【プロフィル】小山聡

 こやま・さとし 名古屋大卒。1987年住友林業入社。環境・エネルギー部マネージャーを経て2016年4月から現職。53歳。

                   ◇

【用語解説】木質バイオマス発電

 燃料は自然資源である木材。これを燃焼することで放出される二酸化炭素(CO2)は、木の成長過程で光合成により吸収された大気中のCO2。このため、木のライフサイクルの過程では大気中のCO2を増加させない。住友林業グループは森林の伐採後も林地に残されたままとなっていた、林地未利用木材などを活用している。