
路線バスが自動運転で停留所に寄せるデモ=5月、東京都羽村市の日野自動車羽村工場【拡大】
後続車は車間距離を安定的に保ちながら走り、前走車が車線を移動する場面でも隊列は乱れない。報道陣が乗車した並走する大型観光バスの車内モニターには、ハンドルやペダルを操作しないで前走車を追従する様子が映し出された。
路線バスが路面の誘導線を走り、自動運転で減速し停留所に寄せるデモも実施。自動運転の基礎技術分野で連携するいすゞ自動車との共同開発の成果を生かした。日野は車椅子の人が乗り降りしやすいようバスの中扉と停留所の隙間を45ミリとする目標を設定。隙間の誤差をプラスマイナス15ミリ以内にとどめた。
AIでトヨタと連携も
乗用車に比べて全長や車幅などが大きい商用車は検知しなければならない範囲が広いため、多くのセンサーやカメラが必要となる。商用車特有の課題をクリアするため、日野はトヨタ自動車グループの一員としての強みも発揮。自動運転や事故回避の精度を引き上げる取り組みで鍵を握る人工知能(AI)の研究開発で、トヨタとの連携を強める可能性もありそうだ。
こうした中、日野と独フォルクスワーゲン(VW)の商用車部門は4月、提携交渉に入ると発表した。自動運転のほか、電動化や物流など幅広い分野で協業することを視野に入れる。
日野が乗用車でトヨタ最大のライバルであるVWと組む背景には、新技術への対応で出遅れると物流業界に提案するサービスで競合他社の後塵(こうじん)を拝してしまうという危機感がある。
自動運転を導入する効果は、運転手の負担を減らすだけではない。日野の北沢啓一常務役員は「商用車は乗用車と違い、顧客企業の事業性も一緒に考えないといけない」と指摘。こうした狙いで日野は今月1日、効率的な物流システムを開発する新会社を全額出資で設立した。