理研など、頭皮移植実験へ “髪の毛のもと”培養に成功

人の頭皮から取り出した幹細胞を組み合わせて作った毛包組織。細い糸状のものは髪の毛が生える方向を誘導するナイロン糸(理化学研究所提供)
人の頭皮から取り出した幹細胞を組み合わせて作った毛包組織。細い糸状のものは髪の毛が生える方向を誘導するナイロン糸(理化学研究所提供)【拡大】

 人の髪の毛のもとになる毛包組織を培養して大量に増やす再生医療技術を開発したと理化学研究所などが発表した。安全性を確かめるため、近くマウスに移植する実験を行う方針。安全性が確認できれば、思春期以降に額の生え際や頭頂部の髪が薄くなる男性型脱毛症の人を対象にした臨床研究を来年にも始めたいとしている。

 脱毛症は男性型や薬の副作用によるものなどに分類され、国内に約2500万人の患者がいる。薬の使用や後頭部の毛包を移し替える方法はあるが、薬はやめると効果が続かず、移し替えも生やせる毛の本数に限界があるといった課題がある。

 理研の辻孝チームリーダーは「開発した方法は毛包の数を増やすのが特徴。わずかな毛包を使い5000~1万本の髪の毛を生やせる」と話す。

 辻氏らは、人の頭の皮膚から取り出した3種類の幹細胞を組み合わせ、毛包と同じ能力を持つと考えられる組織を作製することに成功。京セラと協力して機械を使って安定した品質で大量に増やす技術も開発した。

 将来は、患者自身の後頭部から皮膚をごく一部取り出して毛包組織を大量に培養し、一つ一つ髪の毛が抜けた頭皮に移植することを目指している。

 チームは2020年以降の実用化を目指す。再生医療による脱毛症の治療はさまざまな方法が研究されており、国内では理研のほかに東京医大などが取り組んでいる。