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近年、製薬会社が特許の切れた医薬品「長期収載品」を売却する動きが相次いでいた。新薬開発に経営資源を集中するために、長期収載品ビジネスから脱却を図るためだ。ただ、薬価制度改革の影響で薬価がさらに下がれば、譲渡先の探索にも困難な状況が近い将来必ず訪れる。塩野義製薬が生産関連子会社に移管する新方針は新しい一手として注目されそうだ。
従来、販路が確立され、一定の収益を確保できる長期収載品は、製薬会社の経営を支えてきた。しかし、ジェネリック医薬品(後発薬)の普及が進み、さらに長期収載品の大幅な薬価引き下げも行われるようになって市場が縮小してきたため、後発薬メーカーなどへの売却の動きが相次いでいた。
平成28年には、武田薬品工業が長期収載品30成分をイスラエルの後発薬メーカーとの合弁事業に移管。塩野義製薬も共和薬品に、ノバルティスファーマもサンファーマに移管した。29年には、田辺三菱製薬もニプロに移している。
後発薬メーカーが長期収載品を継承してきた理由のひとつに、「ブランド力のある長期収載品を持っていることが、ジェネリックを医療機関に営業するための突破口になることがある」(後発薬メーカー広報)という。ところが、国が進める薬価制度の抜本改革によって長期収載品の価格の引き下げが進み、最終的には後発薬と同じ価格になるとみられており、後発薬メーカーにとっても魅力は薄れ、移管は容易ではなくなるとみられている。
塩野義が他社への移管から自社グループ内での販売に切り替える方針は、長期収載品をどう扱うのか模索する製薬会社にとってひとつの指針になりそうだ。