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要は、薬で治っても、ゆったりとした心の持ち方を身に付けないと、元のもくあみになりかねないわけである。久保田氏の「心の体操」は、座禅の呼吸法やリラクセーションなどのさまざまなものを参考にしている。
講座は日曜日に東京や横浜で開いている。初回は2時間で、後は自宅で5分の体操を毎日最低5回やるように指導する。しかし「5回以上やらなければと思い込むと負担になるので、本末転倒です。うまくできないと思ったら、講座に何度来てもらっても結構です。無料ですから」と、久保田氏は笑う。
前は受講者の都合に合わせて随時教える方式で、料金が1回2万円だった。経済的な負担を考えたら、気軽に試したり再度通ったりできない。これが無料にした一つの理由でもある。
数年前、ある企業の40代の管理職から、鬱病で4年間苦しんだ話を聞く機会があった。通算8カ月ほど休職して、複数の抗うつ剤と睡眠薬を手放せなかったが、「心の体操」を始めて3、4カ月で全快したという。
注目したのは、この男性が職場復帰をした際、その会社のトップが「のんびりやろうよ」と声をかけてくれたことである。会社の柔軟な対応は、社員の心の健康を維持する上で重要なポイントといえる。
ところが久保田氏が言うように「どこの会社にも、ろくな上司はいない」のが現実である。どのような組織でも、ストレスは当然、大なり小なりある。「ストレスが全くない状態は、死んでいるのと同じことですよ。だからストレスを柔らかく受け止められるように、心を訓練しなければならないのです」
こう語る久保田氏は「メンタルヘルス」という言葉を日本に広めた一人である。最後に取り組む無料講座は「体力とおカネが続く限り」やるそうだ。
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【プロフィル】森一夫
もり・かずお ジャーナリスト。早大卒。1972年日本経済新聞社入社。産業部編集委員、論説副主幹、特別編集委員などを経て2013年退職。著書は『日本の経営』(日本経済新聞社)、『中村邦夫「幸之助神話」を壊した男』(同)など。68歳。