【中小企業へのエール】電気自動車 “機械”“部品”で再び世界を席巻せよ

旭川大学客員教授・増山壽一
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 □旭川大学客員教授・増山壽一

 最近、電気自動車(EV)をめぐる動きが急展開している。英国が2040年までに、ガソリン車やディーゼル車の販売を全面禁止すると発表したり、最大のマーケットである中国も年限を切らない形で同様の発表を行った。この動きはオランダやノルウェー、さらにインドにも広がっている。

 日本も30年までに、新車販売の中で、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)などの割合を、5割から7割にする目標を掲げている。

 これまでEVは、自動車メーカーからの評判がいま一つだった。従来の自動車は、エンジンやトランスミッションの部品が2万~3万点にものぼり、下請け企業が多くの階層に分かれて部品を納める。こうした産業構造は多くの雇用を生み、各種技術をすりあわせる革新の場も提供してきた。

 それがEVによって乾電池で走るプラモデルのようになると下請け企業は事業機会がなくなり、自動車産業の社会的地位も低下するという本能的な恐怖心がメーカー側にあったのだろう。あくまでEVは、ハイブリッド車(HV)やPHVのように補完的利用にとどまるという楽観的な予測が支配していた。

 しかし、この予測を打ち砕く状況が急速に生まれつつある。

 EVのメリットは、単に燃費・二酸化炭素(CO2)規制強化対策や環境負荷低減だけでなく、自動運転や自動車自体の情報端末化へつながることに注目が集まるようになってきた。

 自動運転には高感度カメラ、レコーダーなどが不可欠だ。ワイパーは情報端末としての自動車本体からの指令に基づいて気象予報に即応するようになり、フロントガラスは新型ガラスでモニターに変わるなど部品メーカーも新技術開発のために、他業種と連携しなければならなくなる。企業は、こうした新たなマーケットが無限に広がっていくことを認識する必要がある。

 車載電池の価格低下も、少し前の予測以上に進んでいる。ある自動車関連の中小企業は、大手メーカーのニーズを先取りして、電池の放熱を促す素材開発を独自に進めている。

 「恐れるなEVを、そして産業を支える“機械”“部品”で再び世界を席巻せよ」と日本の中小企業にエールを送りたい。

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 この連載では、さまざまなテーマを取り上げ、日本の中小企業を元気にするための提言を行っていく。

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【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。17年4月から旭川大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。55歳。