「なんで病院で話したことを薬局でまた言わなきゃいけないの?」
「二度手間じゃん!」
患者によく言われるクレームの一つ。それでも、なぜ薬剤師は患者さんの話を聞くのだろうか。
それは、患者の情報を薬剤師は持っていないからだ。薬をもらうとき、薬局に処方箋を持っていく。処方箋に書いてある情報は、以下の通り。名前・生年月日・保険の情報・病院の情報と薬の情報。
これだけ。患者の病気やどんな状態かという情報は一切入っていない。もし、患者から話が聞けなかったら、薬剤師は患者の情報がないままで薬を渡すことになる。
処方箋に書いてある薬が、本当に患者さんに合う薬なのか。正しい薬なのかどうかが分からないということなのだ。
これって、怖いことだと思わないだろうか? だから、薬剤師は窓口で患者の話を聞く。そうすることで、医療が適切で安全に行われる。
でも、こう思う人もいるだろう。
「そもそも処方箋の内容が間違っていることってあるの?」
読者は、どれくらいの割合で処方箋が間違っていると思うだろうか。
2010年に日本薬剤師会が調べたデータでは、約5%の処方箋は薬剤師が「疑義照会」をかけていることが分かっている。
疑義照会とは、処方箋の内容と患者の話がかみ合わないとき、医師に処方箋の内容で間違いないかどうかを確認することだ。そして、3回のうち2回の疑義照会では、処方箋の内容が変わる。
つまり、処方箋全体の2%、50枚に1枚には間違いがある。意外と多いと思わないだろうか? だから、この間違いを見逃さないためにも、薬剤師は患者の話を聞いている。
一口に処方箋の間違いといってもいろいろある。病院事務の処方箋入力間違いだったり、患者の伝え忘れだったり。もちろん、医師の勘違いもある。
そういった間違いを見逃さないため、薬剤師は患者に薬を渡す前、時間をかけて確認している。
薬ができていても、すぐに患者に渡さず、薬剤師が処方箋やパソコンを見て考えているのはそのためだ。
地味だが大事な薬剤師の仕事が少しでも知ってもらえたらうれしい。
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【プロフィル】吉田聡
よしだ・さとし 1977年大阪生まれ。薬局・なくすりーな管理薬剤師。延べ30万人の服薬指導に当たる中、その薬が本当に必要なのかに疑問を持ち、薬剤師の本質は「薬の引き算にある」という考え方にたどり着く。現場では、患者さんに寄り添いながら、薬を減らす服薬指導に定評がある。近年、「薬の引き算をする薬剤師」として、講演などでも活躍中。