【茨城発 輝く】「道なき未知切り拓く」発想で開発 九州北部豪雨で真価、諸岡の機械 (1/3ページ)

 建設や農林業、災害復旧など幅広い分野で活動する機械を製造している茨城県龍ケ崎市の諸岡。走行装置の一種であるクローラ(走行用ベルト)の鉄をゴムに置き換え、ブリヂストンと共同で開発した「ゴムクローラ」は、つなぎ目がなく、耐久性に優れている。これに油圧による動力伝達装置を備えた諸岡の機械が相まって、スムーズで安定した走行と牽引(けんいん)力を生み出してきた。

本社工場の内部。工夫を凝らした機械が組み立てられていく=茨城県龍ケ崎市(海老原由紀撮影)

本社工場の内部。工夫を凝らした機械が組み立てられていく=茨城県龍ケ崎市(海老原由紀撮影)

 九州北部豪雨で真価

 主力製品の一つ、自走式木材破砕機(クラッシャー)は、防衛省への納入実績がある。木や枝葉を3~5センチ大のチップに圧縮し、エネルギー資源に再利用できるのが特長だ。この自走式木材破砕機が2017年7月の九州北部豪雨で被害を大きくした流木の処理に真価を発揮した。

 工事車両が沈んでしまう湿地帯での作業で「こんな機械があったら」という発想が、ものづくりの原点だ。市場の動きをつかみ、ユーザーの声を聞き、求めていることを意識しながら機械を開発している。

 経営理念の一つに「道なき未知を切り拓く」がある。創業者、諸岡一雄氏の言葉だ。不整地や傾斜地などの道がないような場所でも進む自社の製品と、自社の将来をかけている。

 この「道なき…」に「活力ある企業を目指す」を添えた言葉が諸岡のホームページに明記されており、社長の諸岡正美氏(59)は「常にチャレンジ精神を持って、新たな『世界』に挑んでいき、企業を活性化させる意味だ」と説明する。

 スタートラインは、農業用水を確保するための「井戸掘り」だ。一雄氏が高台での稲作を模索していたところ、地下水をくみ上げる井戸を思いつく。1958年に井戸掘りや配管敷設の事業を興すと、66年に法人化。その後、建設業とともに取り組んでいた機械製造が軌道に乗ったことから、製造業への一本化を図る。

 正美氏は、創業者であり、父でもある一雄氏の背中を見て育った。父から「戻ってこい」と声をかけられて23歳のとき、諸岡に入社。最初は資材調達の部署に配属され、30歳で社長に就任するまでには営業も経験した。

 米国に代理店をつくったり、欧州諸国で取引を始めたりと、海外の市場を開拓することに汗を流した。大型免許を持つ自らが各地で機械を操作する実演もした。

 新製品は自ら試験

 新製品は、全て運転し、量産するかどうかを決める。月1回の商品開発会議にも出席し、社員が持ち寄るアイデアを基に話し合いを進めるという。

 「父が機械のベースをつくり、形にした。私はどちらかといえば営業系だが、体の中には土建屋のDNAが入っている」

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