【プロジェクト最前線】コカ・コーラ ボトラーズジャパン

コカ・コーラが提供するスマートフォンアプリ「CokeON」
コカ・コーラが提供するスマートフォンアプリ「CokeON」【拡大】

  • コカ・コーラボトラーズジャパンの久保健一さん(左)と秦野充生さん

 □「Route To Market」

 ■IT活用し効率・組織的な“勝てる”営業

 コカ・コーラ ボトラーズジャパンは、営業活動を最適化し、顧客満足度と労働生産性の向上を両立させる仕組み「Route To Market(ルート トゥー マーケット、RTM)」を構築し、進化させている。

 日本では長年、個人の経験と勘をもとに営業を実行してきた傾向があったが、タブレット端末などITを活用した効果・効率的、組織的営業手法を導入。日本流の仕事への意識改革を進め、限られた時間の中で成果を上げた者が評価され、“勝てる”営業を目指している。

 ◆労働生産性を向上

 「われわれのゴールは限られた経営資源の中で高品質なサービスを確実に実行することで、顧客の信頼を勝ち取ることだ」

 「RTM2.0(フェーズ2)」の総指揮を担うマーケティング統括部RTM部の久保健一部長は、将来のビジョンを語る。その原点は、2015年1月に導入された「RTM1.0(フェーズ1)」にある。

 13年7月、関東にあるコカ・コーラのボトラー社(フランチャイズの一形態、各地域で製造や営業活動を行う)4社が統合し、コカ・コーライーストジャパンが誕生した。

 グローバルの考え方の下、営業担当者の業務内容を分析した結果、報告書作成など支店での内勤が多く、欧米ボトラー各社と比べて総労働時間が長いことが分かった。当時の営業活動は属人的なもので、1日の顧客訪問件数は数件から十数件と個人差があり、また上司は部下の行動を十分に把握・管理できていなかった。コカ・コーライーストジャパンでは、経験に頼った日本流の営業手法の弊害が表面化していたことから、欧米ボトラー各社で実践しているRTMを導入し、フェーズ1で労働生産性の向上を図ることにした。

 フェーズ1の柱は、全営業担当者のタブレットを活用した営業活動である。業務プロセスの統一を図り、ビジネス形態別の売り上げやトレンドを分析し、顧客への移動ルートや滞在時間を計画的に決めた。営業担当者は、毎朝の出勤時にタブレットを通じて当日訪問する顧客を明確にすることができるようになった。

 営業担当者は、外出中の隙間時間でメールチェックや簡易な報告・申請業務を実施することで、帰社後の煩雑な内勤業務が軽減された。上司は、見える化された部下の営業活動をタイムリーに把握できるようになり、部下の行動管理やコミュニケーションが容易になった。

 フェーズ1導入時においては、業務プロセスが大きく変わり、営業担当者の日々のルーティンも変わることから、変化に対して一部社員からの抵抗が予想された。そこで、RTM部の秦野充生さんらは営業現場への意識改革を促すため、支店ごとに約3カ月前から導入計画を練り、フェーズ1を導入することで営業部門にどのようなメリットがあるのかを丁寧に説明し、営業担当者の理解を深めることに時間を費やした。

 タブレット操作に不慣れな営業担当者には、RTMチーム全員が直接営業現場に出向き、営業担当者の苦手意識がフェーズ1導入のモチベーションを下げることのないよう対面コミュニケーションをすることで、丁寧なサポート体制を築いた。

 秦野さんは「タブレット上で簡単に受注が取れたり、ナビを使った訪問ルート、各種申請が出先で完結したりすることにメリットを感じてくれた」と、手応えをつかんだ。

 タブレット導入の成果はすぐに現れた。外出中に業務が行えることで、営業担当者の直行直帰ができるようになった。

 しかし、フェーズ1は海外で既に運用されていた仕組みを見よう見まねで導入した一律的モデルで、日本の商習慣になじまない点もあった。

 ◆日本独自の挑戦

 大型スーパーマーケットが主要顧客の欧米と異なり、日本では自動販売機のオーナーが突出して多いほか、ドラッグストア、業務酒販店、飲食店など、さまざまな業務形態がある。地域ごとの顧客ニーズに応えられていなかったり、まだ内勤業務が多く残っていて労働時間が長かったり、と課題が残っていた。

 15年12月にRTM統括部のヘッドに就任した久保さんは、きめ細やかな対応に進化させた「RTM2.0(フェーズ2)」の構築に着手し、顧客目線で営業を考えることから始めた。16年4月に導入されたフェーズ2では、主要顧客へのアプローチを充実するため、「コールセンター」を「カスタマーコンタクトセンター」へと組織変更し、トレーニングを受けた専属営業担当者が定期的に電話営業を実施することで、顧客への接触回数を今まで以上に増やした。営業担当者の直行直帰が加速し、各支店で毎日行われていた定例ミーティングは週1、2回に減った。

 働き方改革の一環として、育児や介護など個人の事情を考慮する仕組み「時短ルート」も導入された。

 フェーズ2の成果も顕著に表れた。会社業績も向上している一方、12年のフェーズ1の導入前と比べて、17年の外回りの営業時間は10%増、総労働時間は17%短縮され、営業利益増に貢献した。久保さんは「われわれのやっていることは間違っていない」と確信した。日本独自の挑戦は、海外のコカ・コーラグループから研修に訪れるなど注目されている。

 国内の清涼飲料市場は、新製品の開発競争が激化しており、少子高齢化で飽和状態とみられていた。しかし、20年東京五輪・パラリンピックの開催が決まり、訪日外国人観光客の増加など、市場拡大への期待が高まっている。

 18年1月には、コカ・コーライーストジャパンやコカ・コーラウエストなど計6社のグループ企業が統合され、コカ・コーラ ボトラーズジャパンが誕生。1都2府35県で約32万件の取り扱い店舗数を抱えるほか、70万台強の自動販売機を展開する清涼飲料業界の巨大企業となった。

 RTM部は現在、統合会社にふさわしいRTMについて、19年1月からさらなる進化を目指している。久保さんは「われわれの強みである、お客さまと社員の数という営業の“武器”を最大化するための仕組みを構築し、市場実行力の強化を図る」と話している。(鈴木正行)

                  ◇

 ≪焦点≫

 ■歩くとおトク 「Coke ON ウォーク」

 コカ・コーラは、自動販売機をご利用のお客さまの購入をさらに楽しく演出する仕掛けとして、2016年4月、スマートフォンアプリ「Coke ON」の提供を開始。また、近年の健康志向の高まりやお客さまからの期待の声を受け、通勤・通学や買い物など、日常生活での、歩くこと、身体を動かすことに着目し、Coke ONの新サービスとして、今年4月26日から、歩くだけでドリンクがもらえる新サービス「Coke ON ウォーク」の提供を開始。1日当たりの歩数目標を設定して歩くだけで、1週間の歩数目標や、累計歩数の目標を達成するたびに、Coke ONアプリのスタンプを獲得することができる。

 スタンプが15個たまると、Coke ON対応自販機(スマホ自販機)で取り扱っているお好きなコカ・コーラ社製品1本と無料で交換できるドリンクチケットを獲得できる。

 Coke ONの基本サービスであるスタンプカードと連動させ、「歩くことが楽しく、おトクになる」をコンセプトに設計したことで、製品購入以外にも、歩くだけでスタンプをためることができるようになり、消費者の日常生活の中でCoke ONアプリのサービスをより楽しく、そして便利に利用できるようになった。

                  ◇

 ■コカ・コーラ ボトラーズジャパン

【本社】東京都港区赤坂9-7-1ミッドタウン・タワー

【設立】2001年6月29日※2018年1月1日にコカ・コーラ ボトラーズジャパンに商号変更

【資本金】1億円

【従業員数】1万7197人(連結、2017年12月31日現在)

【事業内容】清涼飲料水の製造、加工および販売