【終活の経済学】遺品・生前整理の極意(3)作業現場から

仕分けしながら作業を進める(ネクスト提供)
仕分けしながら作業を進める(ネクスト提供)【拡大】

  • 僧侶を招いて行う供養祭(ネクスト提供)
  • ネクスト事務所のカレンダーは作業予定で一杯だ

 ■思い出の品は「供養品」扱い

 遺品整理会社「ネクスト」(東京都大田区)を訪ね、実際の遺品整理の模様を取材してみた。同社は年に約1000件の整理を請け負う専門会社だ。

 ◆正社員のみ立ち入り

 「『遺品を整理したいけど、どこから手を付ければいいか分からない。業者は何をしてくれるのか?』というご相談から始まることが多いですね。自分で始めたまではいいが、特に写真が出てきたところで作業が止まってしまって片付かない、という方が多いです」とネクスト営業部・佐々木俊一さんは説明する。

 紹介された事例は2017年12月の案件。東京都内にある7LDK+物置小屋という大邸宅で行われた作業だ。トラック7台分の遺品で、作業員14人が対応した。両親が住んでいたが、父親が亡くなって住む人がいなくなったため、息子が遺品整理を依頼した。

 午前9時半に作業開始。基本は依頼者に立ち会ってもらいながら作業する。

 部屋ごとに担当チームを決める。アルバイト作業員もいるが、ネクストでは部屋の中で作業するのは正社員だけ。実は遺品の中からは、遺族も知らない現金や貴金属、宝飾品が出てくることが多い。現金や貴重品がトラブルなく依頼者にきちんと渡るようにするための決め事だ。

 遺品を十把一絡げに処分するのではない。写真や書類は基本的に残しておく。判断に迷う物は依頼者に確認しながら作業を進める。

 今回のケースでは、「梅酒」がたくさん出てきた。「かつて庭に大きな梅の木があり、自分では酒を飲まない母親が、梅酒をつくってはご近所へよく配っていた」と依頼主。そんな「思い出」が遺品整理の現場ではいっぱい出てくる。

 家財の搬出が終わったあと、水回りを中心に清掃。全ての作業終了後に、各部屋の確認をしてもらう。

 ◆僧侶招き供養

 分別により出てきた、買い取れるリユース品を、作業代金から差し引いた額を依頼主に請求する。支払い方法は現金、カード、振り込み払いから選択できる。その場で領収書を渡して午後2時に終了。一般的な作業時間だという。

 ネクストの倉庫にはリユース品が所狭しと保管されている。「一部は海外にも販売するんですよ」と、スタッフの佐々木俊一さん。

 衣類などは災害被災者向けに活動している団体などに寄付することもある。

 倉庫の一角には祭壇がある。

 そのまわりには、故人や遺族らの「思い」がこもりながらも、最終的に遺族が処分を決めたアルバムや人形、仏壇といった物が保管されている。こうした品々は月に1度、僧侶を招いて供養したあとに処理している。

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 ■札束や金塊が見つかることも

 「遺品整理をしていて現金が出てこないことはない」。ある遺品整理会社の経営者はそう断言する。遺品整理に限らず、机やタンスの引き出しを整理するだけで十円玉、五十円玉が見つかる経験は多くの人がしているだろう。

 遺品整理では、小銭ではなく「タンス預金していた札束」「税務署には知られたくない金塊」などが見つかる例がある。ネクストでも、過去には「1000万円の札束」が出てきた経験を持つ。「冷蔵庫の中から金塊が出てきた」「押し入れの奥から、聖徳太子の一万円札が何百枚も入った紙袋が出てきた」といった話もある。

 絵画、時計といったブランド物を、質屋やリサイクル業者と提携して、ちゃんと鑑定してくれるサービスをしている遺品整理業者もある。

 多くの業者は、現金、貴金属、貴重品が見つかれば、きっちり遺族に報告する。だが、「あそこは分からない」という悪評が絶えない業者の存在を指摘する風評があるのも事実だ。