【Bizクリニック】機会損失を招くしがらみと因習

 □イーソーコグループ会長・大谷巌一

 旧態依然とした組織から新たな発想は生まれにくい一方で、小資本のベンチャー企業にはチャンスが訪れる。発想や構築の時間が与えられるからだ。人口ボリュームの大きい団塊世代が75歳以上となる2025年には、大阪府や財界が大阪・関西万博の開催を目指している。新発想ビジネスの布石を打つ契機となるだろう。パラダイムシフトの変革は、お金よりも時間の価値が高い。ロスのないスキーム展開には輝かしい未来が待っている。

 当社は18年、物流と不動産、関連産業の営業情報を受発信し、共有するためのクラウドサイト「イーソーコライブ」を開発した。物流不動産ポータルサイト機能のほか、寄託、賃貸、配車、一時貸し、リノベーションなどの営業機能をカバーする。特徴は社員だけのクローズド環境下で使わないことだ。当社が選んだ同業他社や関連異業種の優秀な営業マンにも提供することで、関係者全員の情報を共有化し、会社の枠を超えた個人間の強固なネットワークが形成できる。

 新卒の新入社員でも各専門家に直接教えを請える。ゴールは新案件の創出だ。物流をコアに異業種融合ができるため、新しい価値観のビジネスを提案・受託することが可能となる。しがらみも忖度(そんたく)もない。「物流ユーティリティープレーヤー」必須の強力な武器として社内外からの期待が大きい。

 アンテナを高く張り巡らし、最新テクノロジーを用いれば、徹底的に合理性と効率化を追求できる。物流、不動産、建築、金融、ITの各分野で業界特有のしがらみにとらわれずに新発想の物流不動産ビジネスを模索できる。

 米国の建国の礎を築いたベンジャミン・フランクリンは「時は金なり」との言葉を残した。「時間を浪費した分、稼げたはずの賃金は手に入らない」機会損失のことを指す。旧態依然とした業界や団体は、経済合理性への関心が低く、その場しのぎと忖度を優先する結果、改革は遠のく。歴史ある会社は因習や特例が多くなりがちだ。

 合理化が進めば削り込みは避けられず、因習や特例は消滅する。だから既得権益を守る人たちは改革への抵抗勢力になる。日産自動車がカルロス・ゴーン氏によって成功したように、改革には“よそ者”のプロ経営者を必要とする。他方、ベンチャー企業や新しいビジネスには、既存業界や団体が有するしがらみや因習は存在しない。

 米国の社会学者エズラ・ヴォーゲル氏は1979年、著書「ジャパン・アズ・ナンバーワン」で日本的経営を高く評価した。今、ベンチャー企業を興す後輩世代に対し、どのようなジャパン・アズ・ナンバーワンを残すのか。しがらみや忖度に縛られず、チャンスロス(機会損失)することのないよう導くことが重要になるだろう。

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【プロフィル】大谷巌一

 おおたに・いわかず 高千穂商大(現・高千穂大)商卒。1981年東京倉庫運輸入社。92年東運開発に出向し、物流不動産ビジネスを創始。99年アバンセロジスティック(現イーソーコ)を設立し、副社長。14年から現職。日本物流不動産評価機構副会長、日通学園流通経済大客員講師を務める。61歳。東京都出身。