【Bizクリニック】「健全な危機感」持ち経営変革

 □イーソーコグループ会長・大谷巌一

 国債発行残高が1000兆円を超え、このままでは株価暴落、国家財政破綻の危機すら想定せざるを得ない状況にある。サルベージ(救難)可能な時期は2019年から28年までの10年間。団塊世代の経営層からジュニア世代への引き継ぎ移行期が23年までの5年間、団塊ジュニアが企業の実権を握るのが24年からの5年間。この先10年間が日本の明暗を分ける勝負の時期といっても過言ではない。

 カギを握るのは米国経済の景気失速だ。早くて2、3年以内に失速が始まり、日本経済も多大な影響を受けるだろう。米国経済が順調に推移しても、この間に日本が財政再建を着実に実行しなければ、10年後には日本国債の暴落による経済破綻が生じかねない。政府による抜本的な制度改革が急務となる中、今般の参院定数6増法の成立などは首をかしげざるを得ない。

 そこで、物流業への提言がある。「健全な危機感」を持つことだ。行動を起こす際には自社ビジネスのコアを強みにして、他のビジネスを巻き込み「業態化」する。柔軟で即時性のある新たなビジネスモデルの試作により、団塊ジュニア世代が実権を握る24年以降への布石を打つことができる。

 経営の悪化が長期化して先が見えなくなり、何もしないでやり過ごす「オーストリッチシンドローム」(ダチョウ症候群)に陥ってしまうと、そこにあるのは「切迫した危機感」だ。思考停止から始まり、重症になると現実逃避に走る。負のスパイラルに入ったら手遅れだ。余力のあるうちに手を打つことが将来の会社の命運を分ける。

 筆者は物流不動産ビジネスを構築する過程で、業界の枠を超えて多くの人々と交流を持った。行動を阻むのは、しがらみ、忖度(そんたく)、既得権益のほか、物流を免罪符にして業態化という新たなチャレンジにバイアスをかける会社や、過去の繁栄を取り戻そうと「本業回帰」に走る会社だと知った。

 本業で高い利益を出し、明るい将来展望が開けるなら、今すぐ分散化した力を本業へ集中すべきだ。しかし前提条件が崩れていると、本業回帰論で紡績事業からの撤廃が遅れ、破綻したカネボウのようになってしまう。

 一方で写真フィルム国内大手、富士フイルムは、スマートフォンのカメラ機能向上やコンパクトデジタルカメラの普及で、需要が激減した本業に見切りをつけた。写真フィルムから派生した技術をスキンケア化粧品、液晶用フィルム、医薬品などに応用して事業化につなげ、事業構造転換に成功した。

 差し迫った「必要性」がない限り、変わることができないのは誰しも同じだろう。逆に自らを変えたければ、必要性を創出すればいい。作家である村上龍氏の「才能とは危機感に支えられた意志」という言葉に共感する。

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【プロフィル】大谷巌一

 おおたに・いわかず 高千穂商大(現・高千穂大)商卒。1981年東京倉庫運輸入社。92年東運開発に出向し、物流不動産ビジネスを創始。99年アバンセロジスティック(現イーソーコ)を設立し、副社長。14年から現職。日本物流不動産評価機構副会長、日通学園流通経済大客員講師を務める。61歳。東京都出身。