【Sakeから観光立国】龍力の本田武義会長、「米のテロワール」追求

生前の本田武義氏。酒造好適米「山田錦」にこだわり抜いた(酒サムライのミッキー・チャン氏提供)
生前の本田武義氏。酒造好適米「山田錦」にこだわり抜いた(酒サムライのミッキー・チャン氏提供)【拡大】

 □平出淑恵(酒サムライコーディネーター)

 「秋津(あきつ)」「金会」「米田」「上三草」そして「奥吉川(おくよかわ)」-。これらは兵庫県の三木市や加東市にある酒造好適米「山田錦」を栽培している特A地区の田んぼに付けられた名前だ。

 今月10日に逝去された「龍力(たつりき)」醸造元、本田商店(兵庫県姫路市)会長を務めた本田武義氏(享年86歳)から、この田んぼの話を聞いたときには驚いた。

 例えば、ワインの原料であるブドウの産地、フランス・ブルゴーニュ地方などでは畑を特級畑、一級畑などとランク付けしてあり、ワインのボトルにも明記されている。いわゆる「テロワール」(生育環境)を示す土地のブランドであり、有名な畑で取れたブドウを使った人気の造り手の銘柄には高値がつく。

 ブルゴーニュ地方のヴォーヌ・ロマネ村にあるロマネ・コンティ畑のワインなどはその代名詞といえるだろう。

 毎年、新しい稲から採れる「米」にもこれは当てはまるのだろうか、と疑問に思うが、本田会長は、日本酒のロマネ・コンティを目指して、この地域の田んぼの土壌研究を始めた。その研究を始めたのが、世間では定年を迎える年齢と聞いたときには、本田会長の地元が生んだ酒米の王様といわれる山田錦への情熱に感激し、その年齢からの挑戦に感銘を受けた。

 本田商店の蔵で使用する全ての山田錦が最高級品である、兵庫県特A地区産のものだ。蔵のフラッグシップである、こだわり抜いた加東市秋津産の山田錦を使った純米大吟醸「秋津」はそれが形になったものだ。

 本田氏は業界にも長年貢献してきた。1981年商品化が始まったばかりの吟醸酒を広めるために、蔵元43社が全国から集まって設立した吟醸酒協会の初代会長に就任、そして、一流の酒と一流の料理による美味探究を実現する会である「日本美米美酒美食倶楽部」会長を務めた。こうした幅広い活動で広く国内外に知られた本田氏に、SNS(会員制交流サイト)で海外からも多く弔意が示された。

 心からご冥福をお祈りいたします。

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【プロフィル】平出淑恵

 ひらいで・としえ 1962年東京生まれ。83年日本航空入社、国際線担当客室乗務員を経て、2011年コーポ・サチを設立。世界最大規模のワイン審査会、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)のアンバサダー。日本酒蔵ツーリズム推進協議会運営委員、昇龍道大使(中部9県のインバウンド大使)、東北・夢の桜街道推進協議会アドバイザーを務める。