【Bizクリニック】老舗と共同出資会社、体質改善を推進

 □イーソーコグループ会長・大谷巌一

 物流不動産ビジネスを中核とする改革を推進し、物流業界を「きつい、汚い、危険」の3Kから「稼げる、カッコいい、感動する」の新3Kへと変革する。それにより、物流業界と不動産業界の中間に当たる第3の業界を創設することがイーソーコグループの願いであり、使命だ。折しも2025年には人口ボリュームの大きい団塊世代が75歳以上となる。パラダイムの大変革や生産性向上を阻む忖度(そんたく)、しがらみなど、「昭和の思考」からの呪縛を解かなければならない。当社はその25年に照準を絞り、イノベーションを巻き起こす布石を打ち始めている。

 それは、全国の老舗物流会社と共同出資会社を設立し、提案を行うスキームだ。多動力を基本に労働生産性を高める物流不動産ビジネスが全国に浸透していくことで、人口減少とマーケット縮小に即した営業戦略が構築できる。改革は「体質改善」であって、外科手術ではない。物流業界、不動産業界に加え当社が第3のポジションを確立するには、キャスチングボートを握り、先回りするしかない。そこで、治外法権的な考えも取り入れ、従来の価値観とは一線を画す「出島戦略」を考えた。

 共同出資会社の基本戦略は「資本と経営の分離」。資本面ではオーナーが将来を託せる社員や、経営を志す賛同者に投資する。

 経営面で重要なのは人材だ。当社グループで採用し、ジョブローテーションで多動力を身に付けた「物流ユーティリティープレーヤー」を共同出資先へ派遣。フォークリフトの運転から物流営業、不動産営業、建築関連事業まで幅広くこなす。派遣先でクラウドコンピューティングシステム「イーソーコライブ」やあらゆるものがネットにつながるIoT、第5世代(5G)移動通信方式など最新テクノロジーで情報と人脈を共有する。これにより、大手企業に対抗する図式ができあがる。

 重要視するのは共同出資先や親会社に対するリスペクトだ。老舗として長年培った事業と今日まで継続してきた努力に敬意を表する。今のビジネスを否定することなく、25年をめどに時間をかけて体質改善を進める。共同出資先、親会社をはじめ、関係するすべてが幸せになり、物流改革を通じて夢のある業界づくりが実現する。

 日本企業の99%以上を占める中小企業はファミリー企業が多く、経営改革が遅れるケースが散見される。物流業も例外ではなく、出島戦略で企業を活性化できれば、日本経済を元気にできる。大変革期をチャンスととらえ、アンテナを高く張り巡らしてほしい。(この項おわり。次回から日本パーソナルビジネス協会の親川政明代表理事が中小企業の経営力アップについて解説します)

                   ◇

【プロフィル】大谷巌一

 おおたに・いわかず 高千穂商大(現・高千穂大)商卒。1981年東京倉庫運輸入社。92年東運開発に出向し、物流不動産ビジネスを創始。99年アバンセロジスティック(現イーソーコ)を設立し、副社長。14年から現職。日本物流不動産評価機構副会長、日通学園流通経済大客員講師を務める。61歳。東京都出身。