【フロントランナー 地域金融】みずほ信託銀行の信託業務支援の取り組み(3)

 ■業態超え信託機能を地方顧客に提供

 みずほ信託銀行の信託業務支援のスキームでは、代理店となる銀行がオリジナルの商品名を自由に設定し、自行の取扱商品にシリーズとして加えることができる。顧客からの申し込みを受けたら、みずほ信託銀行が顧客から信託金を受領して信託を設定。信託資金は地方銀行の定期預金に預け入れる。実質的には、取り扱い銀行の預金勘定に資金が戻ってくることになる。

 設定した信託は、決算時には定期預金の利息から信託配当を交付し、信託金に加算される。相続が発生した際には、親族などの受取人が信託配当を含めた金銭を受け取る(一時金または定時定額)という流れだ。

 信託機能の提供・事務手続きは、契約当事者のみずほ信託銀行が担当。取り扱い銀行にとってはシステム構築などの負担が少ない点もメリットだ。

 一方、顧客には、自分の使い慣れた近隣の支店窓口で信託を申し込める点が魅力的だ。運用財産がこれまでと変わらない地方銀行の預金であるという面から、特に高齢の顧客が受け入れやすい仕組みといえる。

 「みずほ信託銀行は全国に36の本支店を構えていますが、地方では信託代理店であるみずほ銀行の店舗を含めても数店舗しか窓口がないエリアがほとんどです。社会的ニーズの高まっている信託商品を隅々まで行きわたらせるためにも、広範な営業エリアを擁する地方銀行との連携は必然でした」と、森下充弘執行役員・信託フロンティア開発部長は話す。

 この代理店スキームで現在、みずほ信託銀行が提供しているのが遺言代用信託で、取り扱い銀行に対応して一定範囲でのカスタマイズも可能だ。この遺言代用信託は、北海道銀行(2016年10月)での取り扱い開始を皮切りに、地銀9行で導入されている。相続関連商品のニーズの広がりを背景に、全国の地方銀行で検討が進んでいるという。

 さらに、同じスキームで暦年贈与型信託商品の発売も10月から開始。今後は遺言代用信託と暦年贈与信託の2つの信託商品もコンテンツの一部と位置付け地域金融機関向けの総合的な信託業務サポートを進めていく。

 「資産承継にかかる助言業務の充実を目指す地域金融機関も増えており、当行としては商品の提供にとどまらず、そうしたご希望を支える基盤のようなものも提供できればと考えています。一例としては、信託代理店を対象とした、タブレットによる販促サポートツールの提供を開始しました。このように信託関連業務の後押しを大きな一つのサービスと捉え、地域金融機関をサポートしていければと思います」(森下部長)

 業態を超えた信託機能の提供は、地域の顧客に今最も求められているソリューションの形かもしれない。

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 (編集協力)近代セールス kindai-sales.co.jp