三菱ケミカル、TOTO、東大など人工光合成でプラスチックやゴム製造 (2/3ページ)

水に浸した光触媒シートから水素と酸素が出てくる様子
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 水素と酸素は水に浸した光触媒に太陽光を照射して得る。ARPChemが今年1月に試作した大型反応装置は、縦と横が約1メートル、厚さ18ミリの板状をしていて、内部に光触媒のシートが9枚置かれている。

 水の分解には太陽電池で得た電気を利用する方法もあるが、光触媒は「電気が不要なのでコストを抑えられ、日照時間が長い赤道直下に装置を置けばコスト回収のハードルはさらに低くなる」(瀬戸山氏)。一方、太陽光エネルギーからどれだけ水素を作り出せるかを示す変換効率は太陽電池に分があるとされるが、プロジェクト開始当初に0.2%だった変換効率は、直近では3.7%にまで高まっている。これは植物の光合成の10倍以上の水準だ。

 プロジェクトでは、最終年度の21年度に10%を達成したい考え。達成すれば、実証実験が可能になるという。並行して水素と酸素を分離する膜や、オレフィン製造に使う合成触媒も開発中だ。

 温暖化対策に大きな一歩

 日本は光触媒の研究で世界のトップを走っている。もともと光触媒の研究は、1970年代初頭に東大大学院生の藤嶋昭氏と指導教官だった本多健一助教授(ともに当時)が、水に浸した酸化チタンの結晶酸に紫外線を当てると水が分解されて水素と酸素が発生する「本多-藤嶋効果」を発見したことに始まる。「多くの国は諦めて太陽電池に行ってしまった」(瀬戸山氏)だけに、日本にかかる期待は大きい。

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