ドローン物流 ANAのやる気 将来の事業化見据え年内にも実証実験 (3/3ページ)

ANAホールディングスが大阪空港で行った実証実験は、航空機の機体点検作業の効率アップにドローンを活用するというもの。被雷した機体にへこみがあるかを確かめるという想定だった(同社提供)
ANAホールディングスが大阪空港で行った実証実験は、航空機の機体点検作業の効率アップにドローンを活用するというもの。被雷した機体にへこみがあるかを確かめるという想定だった(同社提供)【拡大】

整備利用も検証

 例えば、航空機が飛行中に雷に打たれた際、へこみができる場合がある。これは着陸後に整備士が目視で確認するが、ドローン搭載カメラを導入すれば作業時間を短縮できるか、昨年2月に大阪(伊丹)空港で実験した。福島県などが整備するロボット開発拠点「福島ロボットテストフィールド」(相馬市)では昨年に2回、配送実験も行っている。

 今年度は、傘下のANAセールスが販売する沖縄の旅行商品で、慶良間(けらま)諸島でのシュノーケリングを対象に、ドローンで動画撮影するサービスを展開。こちらも実証実験の位置づけだが「かなり好評で続けるかもしれない」(津田さん)。

 将来、ドローンが人を運ぶ「空飛ぶ車」は実現するのだろうか。津田さんは「人を運ぶのは機体性能が上がってからで、まずは貨物。ただし、旅客輸送こそANAの安全運航に対する経験が生かせる。4、5人が一度に運べるようになれば将来性もある」という。保理江さんも「現在普及するドローンは“フライング・カメラ”。街中でのドローン配送も、自動運転車が実用化された後は、適材適所ですみ分けたり連携したりすることになっていく。そんな将来にするためにも、ドローンが安全に使えるようになる環境を、今、きちんと構築することが必要」と指摘する。

 世界を見渡しても、ドローン運航の事業化に取り組む旅客航空会社はほとんどない状況だ。目指す未開の地がANAにとっての「ブルーオーシャン(未開拓の新市場)」になるかどうかに注目したい。(日野稚子)