【高論卓説】大坂選手に果たすコーチの役割 「巻き込み型」ビジネスにも活用 (2/2ページ)

試合中にバイン・コーチと話す大坂なおみ(右)=9月23日(撮影・中井誠)
試合中にバイン・コーチと話す大坂なおみ(右)=9月23日(撮影・中井誠)【拡大】

 このように実施したいことを区分せずに、後者に対しても「この方法で方針を実現してください」と一つの方法を押し付けてしまうと、成果が上がらない。部下であろうと同僚であろうと、相手の考えを聞かないで押し付ければ押し付けるほど、「そうはいっても、無理だろう」「もっとよい別の方法があるだろう」という思いが払拭されず、抵抗感をもったままアクションに移るので、成果の創出に歯止めがかかる。

 実施したいことに合わせて、巻き込み型とトップダウン型を使い分けるためには、両方のリーダーシップを発揮できるようになっている必要がある。しかし、巻き込み型のリーダーシップを実際に発揮できている人は極めて少ない。実際にできていないことを実践するためには、相当程度、体に覚えこませていかなければならない。

 手法や話法が単純であればあるほど、そして反復すればするほど、体に覚えこませやすい。演習では、5つの質問だけで、巻き込み型リーダーシップを実現する手法を反復演習する。そして、「今後3カ月間は、巻き込み型リーダーシップだけで部下と対話してみてください」とお勧めしている。トップダウン型で取り組んできた人は、そのくらい巻き込み型に傾斜して初めて、ようやく両者を半々くらい繰り出せるようになるからだ。

 トップダウン型に傾斜しがちな人は、自らかつて優秀な成果を収めた人が多い。しかし、自分が優秀な成果を収めた手法が、今日、その部下に当てはまるとは限らない。ベインコーチは、自身は選手としては大成しなかったという。自身が優秀な成果を収めたかどうかによらず、巻き込み型リーダーシップの実践スキルを身に付ければ、組織の成果を上げやすくなるのだ。

                  

【プロフィル】山口博

 やまぐち・ひろし モチベーションファクター代表取締役、慶大卒。サンパウロ大留学。第一生命保険、PwC、KPMGなどを経て、2017年8月モチベーションファクターを設立。横浜国立大学非常勤講師。著書に「チームを動かすファシリテーションのドリル」(扶桑社)、「99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100」(講談社)。56歳。長野県出身。