
「起業から12年、世界の企業からも信用されるアルゴリズム開発を続けていく」と話すVALUENEXの中村達生社長【拡大】
VALUENEX(バリューネックス、VNX、東京都文京区)の創業者、中村達生社長は「解析とは数値の背景を見つめ、要因をモデル化すること。そのモデルを広く活用できるようにするのがアルゴリズム開発だ」と言う。当然、同社の活躍分野は知財業界だけにとどまるはずはない。手掛ける領域は大きく広がりつつある。
その第1は事業戦略支援だ。これは特許や論文などのデータを俯瞰(ふかん)解析図(クラスターマップ)にする延長線上にある。どの企業がどの技術分野へ仕掛けているかを時系列に追いながら、今後の動きについて仮説を立てた上で、各社の事業や商品・サービスなどのデータや情報を重ねて解析することで、事業の予測や意思決定の支援を行う。現在、日本の大手企業に広がりつつある。
次は、商品・サービス開発の分野だ。風が吹けば桶屋がもうかるではないが、保有技術活用の糸口を別の産業界や消費者のニーズから逆に探し、企画担当者の発想を支援する。特許、製品、株価などのデータのつながりを解析可能にする、ニーズ解析アルゴリズムを開発した。
3つ目は、金融分野である。M&A(企業の合併・買収)用の投資評価アルゴリズムは特許データの俯瞰解析により、自社と相手企業の技術や事業のシナジー度、関連分野の広がり度や集積度を測った上で、過去の投資事例データなどを重ね、投資金額を算出する。その精度は高く、海外の投資銀行や法律事務所などでの展開が始まっている。
最新の開発案件は、スタートアップ企業への投資戦略を支援するアルゴリズムだ。スタートアップ企業や投資家らのデータを用いて、関連業界における人的つながりなどを分析する。例えば、投資を目指す技術分野やスタートアップ企業を探し、アプローチをするための人脈を解析する。日本企業は近年、海外へ調査拠点を置いているが、優良スタートアップ企業への投資では欧米勢に差をつけられており、需要はありそうだ。
中村社長は「大リーグを見ていてもデータ解析が誰にでも身近になり始めたことが分かる。海外企業では5、6年前から予測解析やデータ融合という言葉がよく使われている。世界のデータ解析は急速に高度化している。日本発、世界標準ツールの開発を目指し、成長していきたい」と語った。(知財情報&戦略システム 中岡浩)