【Sakeから観光立国】トップ講師9人がスタディツアーで来日

五百尾会長の田んぼでのWSETスタディツアーのメインイベント、山田錦「特A地区」での稲刈り=兵庫県三木市
五百尾会長の田んぼでのWSETスタディツアーのメインイベント、山田錦「特A地区」での稲刈り=兵庫県三木市【拡大】

 □平出淑恵(酒サムライコーディネーター)

 世界74カ国に講座を展開する、ワインに関する世界最大の教育機関WSET(Wine and Spirits Education Trust)に日本酒講座ができて5年。新規の講師育成ツアーは日本政府の招聘(しょうへい)事業として毎年行われてきたが、今年初めて多くの生徒を育成しているトップ講師9人が、レベルアップを目的とした高度な内容の「スタディツアー」に参加するため来日した。

 同講座の登録講師は100人を超えるが、米国、カナダ、香港、中国、オーストラリアから来日したトップ講師は、高い実績を評価されている。4~9日、同講座を開発したアントニー・モス氏、菊谷なつき氏らが企画し、同行した。

 初日は日本醸造協会(東京都北区)で研修が行われ、中原克己研究室長による酵母の講座、日本航空のワインアドバイザー、大越基裕氏と東京・恵比寿の居酒屋「GEM by moto」(ジェムバイモト)の店主、千葉麻里絵氏によるフードペアリングの講座を受講した。

 現場を体験するため「而今」醸造元の木屋正酒造(三重県名張市)、「松の司」の松瀬酒造(滋賀県竜王町)、「七本槍」の冨田酒造(同長浜市)、「澤屋まつもと」の松本酒造(京都市伏見区)の4カ所の蔵元を訪れて酒造りと理念を修め、また種麹製造元の菱六(同東山区)では種麹を掘り下げて学んだ。

 日本酒の原材料である米については、次世代酒米コンソーシアムの主催で、酒類総合研究所の岩下和裕部門長、京都府立大学大学院の増村威宏教授、酒造技師の勝木慶一郎氏の酒米セミナーを受講、次世代米を使った日本酒の利き酒も体験した。

 そしてツアーのメインイベントが、兵庫県主催による吉川町山田錦村米部会(三木市)の五百尾俊宏会長の山田錦特A地区での稲刈りだ。全国蔵元が羨望のまなざしを送る“酒米の王様“を育てる田んぼで、まさにワインでいうところの「グランクリュ」(特級畑)での体験に、トップ講師たちは大変な興奮ぶりだった。スタディツアーは来年も予定されている。

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【プロフィル】平出淑恵

 ひらいで・としえ 1962年東京生まれ。83年日本航空入社、国際線担当客室乗務員を経て、2011年コーポ・サチを設立。世界最大規模のワイン審査会、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)のアンバサダー。日本酒蔵ツーリズム推進協議会運営委員、昇龍道大使(中部9県のインバウンド大使)、東北・夢の桜街道推進協議会アドバイザーを務める。