【高論卓説】ビール類シェア競争に異変 キリンの海外PB生産算入に波紋 (2/2ページ)

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 当時は大手流通のPBはなかった。大手流通の海外受託生産が大がかりに始まったのは、円高基調だった2000年代後半から。ちなみに、キリンが現在つくっているバーリアルはさいたま市内のミニストップで84円(350ml缶、税込み)。同じ第3のビール「キリンのどごし生」の143円(同)より59円も安い。

 キリンのイオンからの受託分は、「年間1000万箱(1箱は大瓶20本)強では」(ライバル社)と目されていて、年間シェアなら3%を超えるかもしれない。

 一方、3層あるビール類の税額は26年までに統一されていく。ビールが下がり、第3のビールは上がっていく。それでも、PBの店頭価格は下げなければならないため、キリンには相当なコストダウン圧力がかかるはず。また、円高となれば今回とは逆に、海外へ生産が切り替えられる可能性も生じる。何より、バーリアルに「キリン」のロゴは印刷されていない。

 ビールは装置産業の代表格。工場の稼働率が重要なのは言うまでもない。だが、シェア競争が過熱するあまり、消費者の関心がビール類から離れてしまう事態だけは避けなければならない。ビール類は生活者に寄り添う商品なのだから。

                   

【プロフィル】永井隆

 ながい・たかし ジャーナリスト。明大卒。東京タイムズ記者を経て1992年からフリー。著書は『EVウォーズ』『アサヒビール 30年目の逆襲』『サントリー対キリン』など多数。