【高論卓説】構想・企画・設計力の時代 行動できるリーダーますます必要 (2/2ページ)

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 考えてみれば、私がかつて勤務していた霞が関の世界も、これまでは、官僚の強みと言えば、「ものづくり」風に、大変なプロセスを経て緻密な文章を築き上げ、法制局対応や国会対応を乗り切るところが肝であった。言うまでもないが、今後、このあたりの作業はAI(人工知能)などにとって代わられていく。

 少子高齢化、地方の衰退、財政難など、まさに、国難とも言うべき状況下、上流部分とも言うべき官僚の構想力・企画力が問われる時代に入ってきているが、印象としては、現状の政策は、日本版○○といった横並び・模倣系のオンパレードという気がしないでもない。

 先日、ある会合で将棋の田中寅彦九段と再会したが、おっしゃっていた内容で特に印象に残っているのは、「もはや、トップ棋士でもAIに勝てない時代となったが、将棋というゲームを構想し、普及させていくのは人間だ」というものだ。まさにスマイルカーブの両端であると言えよう。

 最近では、子供向けに開発された「どうぶつ将棋」など、駒やマス目の数を大胆に減らし、駒の図柄も工夫して柔らかい印象を持たせ、さらに普及させる努力も実りつつあると聞く。

 自ら問いを発し、考える基軸を有し、構想を打ち出して行動できるリーダー(始動者)がますます必要な時代になったことを痛感する。

                  

【プロフィル】朝比奈一郎

 あさひな・いちろう 青山社中筆頭代表・CEO。東大法卒。ハーバード大学行政大学院修了。1997年通商産業省(現経済産業省)。プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)代表として霞が関改革を提言。経産省退職後、2010年に青山社中を設立し、若手リーダーの育成や国・地域の政策作りに従事。ビジネス・ブレークスルー大学大学院客員教授。