清水建設と産業技術総合研究所は「ゼロエミッション・水素タウン連携研究室」という新組織を設立、産総研の福島再生可能エネルギー研究所(FREA、郡山市)で本格的な活動を開始した。産総研が保有する水素関連を含めた幅広い技術と、清水建設のエネルギー管理技術などを融合。建物や街区から排出される二酸化炭素(CO2)を削減するとともに、安全な水素貯蔵によるエネルギーの供給を図ることで、環境に優しく災害に強い次世代型の街づくりに貢献するのが目的だ。清水建設エネルギー技術センター水素技術グループの野津剛グループ長に、今後の方向性などについて聞いた。
カギは蓄エネ技術
--産総研と連携した背景は
「建築関連のCO2排出量は日本の約40%を占め、そのうち8割近くはエアコンなどの空調設備や照明など、建物運用時のエネルギー消費が占めている。CO2排出を大幅に削減するには省エネの推進と再生エネの導入、さらには太陽光など同エネルギーから作った『CO2フリー水素』の活用が求められるからだ。また、トヨタ自動車は再生エネと水素利用の両輪によって、2050年に工場でのCO2排出ゼロを目指している。こうした動きに対応するには、的確なソリューションを提供しなければならないと判断した」
--再生エネを拡大させるに当たってのカギは
「蓄エネ技術だ。水素貯蔵のメリットは大容量。貯蔵量が増えると蓄電池に比べてコストが優位となる。また、長期間にわたって保存できるため、空調をあまり使わなくて済み太陽光の発電量が多い時期に水素を貯蔵し、暖房期に集中的に利用するなど、季節間でのエネルギー融通が可能な点も強みだ。北海道地震では大規模停電が起きたが、水素の貯蔵は事業継続計画(BCP)にも有効だ」