SBIインシュアランスグループは、日本のインターネット金融のパイオニアであるSBIグループの保険事業を担っている。持ち株会社として、SBI損害保険、SBI生命保険、SBIいきいき少額短期保険、SBI日本少額短期保険、SBIリスタ少額短期保険の傘下5社が一体となって総合的な保険サービスを提供する。9月27日に東証マザーズ市場に新規株式公開(IPO)した、乙部辰良会長兼社長に成長戦略について聞いた。
損保100万件を突破
--他社に比べて、どのような強みがあるのか
「価格競争力があることだ。人工知能(AI)やビッグデータなど最先端テクノロジーを最大限活用することでコストを徹底的に抑え、割安な保険料として顧客に還元している。例えばSBI損保の自動車保険は、従来の代理店型はもちろん、インターネットを介したダイレクト型の他社と比べても保険料を低くしている。また、SBIグループの顧客基盤への販売促進のほか、例えば生保加入者に損保のがん保険を紹介することで、広告宣伝費をかけずに相互に商品を販売している」
--業績の動向は
「損害保険、生命保険、少額短期保険のうち、最も保有契約件数が多いのが損害保険だ。2018年6月末で前年同月比5.5%増の99万9000件だった。翌月には100万件を突破した。生命保険は同15.8%増の12万5000件、少額短期保険は同7.5%増の63万7000件。いずれも順調に拡大している。外部顧客からの経常収益の割合でみると、18年3月期は損害保険が39.5%、生命保険35.8%、少額短期保険24.7%で、バランスが良くリスク分散されている」
地域金融で販売強化
--上場の狙いは
「資本市場にアクセスするためだ。保険は顧客に安心を提供する事業なので、財務基盤がしっかりしていないといけない。規制基準は満たしているが、さらに成長を遂げるためには市場から資金を調達し、ソルベンシーマージン(保険金の支払い余力)比率を引き上げる必要がある」
--今後の構想は
「ネットのほかに地域金融機関での販売を強化する。地域金融機関は住民の信頼が厚く、対面販売チャンネルとして魅力的だ。また、さらなるコストカットを進めるために、より高度なテクノロジーの活用を進めていく。グループのSBIインベストメントが、フィンテック関連のスタートアップに投資しているので、提携を通じて最新テクノロジーを取り入れて新しい保険商品を開発していく。M&A(企業の合併・買収)にも取り組む」
--M&Aの方針は
「強いシナジーを期待できれば検討していく。保険事業は規模が拡大すると経営が安定し、急成長する構造になっている。事業拡大のため、同業の会社に対して積極的にM&Aを試みていく」
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【プロフィル】乙部辰良
おとべ・たつよし 東大法卒。1981年大蔵省(現・財務省)入省。金融庁総務企画局審議官、財務省関東財務局長などを経て、2017年SBIインシュアランスグループ会長就任。18年2月から現職。60歳。三重県出身。
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【会社概要】SBIインシュアランスグループ
▽本社=東京都港区六本木1-6-1 泉ガーデンタワー16階
▽設立=2016年12月
▽資本金=72億3600万円
▽従業員=784人 (2018年9月末時点)
▽経常収益=660億円 (19年3月期予想)
▽事業内容=保険持ち株会社