【高論卓説】「PC文化」アップルの訴え 「データ産業複合体」の弊害を警鐘 (2/2ページ)

※画像はイメージです(Getty Images)
※画像はイメージです(Getty Images)【拡大】

 ネット文化とPC文化は全く異なるものである。PC文化は、個人の手元にコンピューターを置き、それまであった中央集権的な大型コンピューターによる支配から脱却しようというもの。目標は「IBMのような大企業支配からの脱却」であり、「個人の自主性」だった。

 それに対してグーグルのようなネット文化の企業が戦う相手はIBMではない。多くの人々は「プライバシーよりも、利便性と安さの方を選択する」というのが彼らの主張。個人データの利用を制限することは、イノベーションの妨げになると考えている。

 政府による検閲の怖さ、公権力から個人のプライバシーを守ることの重要性を知っている人たちは、当然のことながらクック氏の主張を支持している。

 しかし、世界中の多数派は、ネット上に自分のプライバシーをさらすことを怖いものとは感じていない。先進国限定だったPC文化と異なり、ネット文化は世界規模に広がっており、「利便性と安さ」を大事にする層は分厚いのだ。

 クック氏がデータ産業複合体という言葉を選んだ理由は、61年に当時のアイゼンハワー米大統領が「Military-industrial complex(軍産業複合体)」の弊害について警鐘を鳴らしたことを意識しているに違いない。警鐘もむなしく、米国の軍産業複合体はその後、ますます力をつけた。データ産業複合体はどのような運命をたどるのだろうか。

【プロフィル】山田俊浩

 やまだ・としひろ 早大政経卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。週刊東洋経済の編集者、IT・ネット関連の記者を経て2013年10月からニュース編集長。14年7月から東洋経済オンライン編集長。著書に『孫正義の将来』(東洋経済新報社)。