□久松農園代表・久松達央さん(48)
--会社員から1999年に農家に転身。今は50種以上の野菜を作り、直販で年間約4500万円を売り上げる
「バブル崩壊や阪神大震災など世の中が暗くなる中、何か未来につながるような仕事がしたいという漠然とした思いで農業の世界に入った。地元の茨城県の農業法人で1年間の研修を受けた後、独立して就農した。食料に使われる化学物質などが問題視される中、その問題を技術的に払拭する有機栽培に感銘を受けた」
--どのような営農戦略があったのか
「『おいしい野菜でお客さまを喜ばせたい』という方針ははっきりしていた。やりたかったのは、有機栽培でいろいろな野菜を生産し、事前契約で直接顧客に売る『直販』だ。おいしいと思う野菜の品種を選び、鮮度と旬にこだわった。例えば、ホウレンソウでは『まほろば』という品種を栽培しているが、病気になりやすく形もふぞろいで生産性が悪い。しかし、葉は肉厚でうまさは格別。手間はかかるが、味にこだわりたかった」
--課題は
「今の直販のコアターゲットは首都圏の夫婦や子育て世帯。ただ単身世帯が増え、われわれのニッチな野菜を食べる口が減っている。中心である旬の8品目の野菜セットの直販が時代に合わなくなっている。さらに通販業者も野菜の直販に次々と参入しており、状況は厳しい」
--課題への対応と目標は
「われわれの農園で育てた人材を独立させる際に出資して、一部の野菜を生産してもらうサテライト工場のようなものを来年から作る計画だ。ある程度のグループ化や集約が必要だと認識している。当社本体が『ミニ農協』のような役割となり、生産や販売、物流からマーケティングを効率化し、広く届けたい。サテライト工場を増やし、5年後にも年間1億円の売上高を目指す」
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【プロフィル】久松達央
ひさまつ・たつお 慶大経済卒。1994年4月、帝人入社。98年に帝人を退職し、農業法人での研修を経て99年独立就農。現在は8人のスタッフと、年間50品目以上の旬の有機野菜を露地栽培。契約消費者と都内の飲食店などに直接販売している。茨城県出身。