東芝の火力発電設備は温暖化への懸念から新規案件が減り、システムLSIは開発費がかさみ赤字にあえぐ。リチウムイオン電池や再生エネルギー発電設備など、次の柱と頼む事業は激しい競争が予想される。当面は合理化やコスト削減に頼らざるを得ない。
さらに気がかりなのは、「アクティビスト」と呼ばれる物言う株主の存在だ。6%超を保有する米ファンドのキング・ストリート・キャピタル・マネージメントは、東芝が実施する7千億円の自社株買いに対し、金額を増やすよう要求。香港のファンドも似たような動きをみせる。経営陣が株主対応に神経をすり減らし、中長期的な視点を失う可能性も捨てきれない。
売却を決めた米LNG事業は本業との親和性が低く、販売価格が大きく変動することなどから、一時は最大1兆円の損失が発生する懸念があった。東芝が中国ガス大手に売却できれば、「負の遺産」を一掃し、経営再建に専念できる。しかし、LIXILグループはイタリアの子会社を中国企業に売却しようとした際、米国政府に待ったをかけられた。
東芝も米国から横やりを入れられる恐れがあり、平田政善最高財務責任者(CFO)は記者会見で、「各国の法令をパスしないといけない」とリスクを認めた。