【中小企業へのエール】軽減税率 ルール無力化の風習、イートインにも

 □旭川大学客員教授・増山壽一

 せっかく盛り上がった国内景気への配慮から消費税を現在の8%から10%に引き上げる決定を2度にわたって延期した現政権だが、いよいよ2019年10月に実施する予定だ。

 そして「“酒類”“外食”“ケータリング・出張料理等”を除く飲料食品」と「定期購読の契約をした週2回以上発行される新聞」は、8%の軽減税率が適用される。二重税制の初適用は画期的といえる。

 問題は「外食」の扱い。例えばスーパーやコンビニエンスストアで、総菜やカップラーメンをイートインコーナーで食べる場合、外食扱いで10%の消費税がかかる。

 消費者のニーズや店側のサービス向上の一環で、イートインコーナーが充実されてきたが、それに水を差す恐れがある。

 そんな折、新聞報道によると国税庁の通達で、8%の軽減税率を適用するなら、イートインコーナーでは飲食を禁ずるという掲示を求める方向であることが明らかになった。

 記事を見て愕然(がくぜん)とした。なぜなら、杓子(しゃくし)定規というか、ルールを形式化、そして無力化する日本の悪い風習を垣間見たような気がしたからだ。

 イートインコーナーで、カップラーメンを食べている横に飲食禁止の張り紙がある。そんな風景はどうにも受け入れ難い。

 店側は、張り紙があるので一応の責任は果たしている、あとは消費者がご自由に、との趣旨が強い。法規自体を臨機応変に見直さず、骨抜きにして、現実に合わせていこうという悪習がにじみ出ないか、心配なのだ。

 エスカレーターでは走らないでと書いてあっても、なぜか片方を皆があけて、追い越す者はわが物顔で走っていく。自転車は車両扱いであるのに、歩道を逆走していく-。そんな状況を思い出させる。

 堂々と店側が店内で食べることを確認できたら10%の消費税をいただく、それを原則とする。張り紙は不要だが、イートインの場所の整備に店側も努力し、政府も支援する。そんな仕組みこそが王道であるべきだ。

 お上の目を逃れて、こそこそイートインコーナーで総菜を食べる。そんな子供が大人になって税金や政治をどう思うのか。

 現役世代も、今の課題を大過なくやり過ごすことだけにきゅうきゅうとするばかりでは国にとって何か大事な“ねじ”を外してしまう危険を、常に考えないといけない。

                   

【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。17年4月から旭川大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。56歳。