【プロジェクト最前線】小林製薬 「のどぬ~る」 ヨウ素にこだわり、殺菌力を追求 (2/2ページ)

息の長いヒット商品となっている小林製薬ののどぬ~るスプレー
息の長いヒット商品となっている小林製薬ののどぬ~るスプレー【拡大】

  • のどぬ~るを開発した小林製薬の田土陽介さん(左)と野崎学さん
  • 小林製薬の研究風景
  • シンガポールで販売されているのどぬ~る。東南アジアを中心に販売地域が広がっている

幅広いウイルスに効果

 一方、入社する前からヨウ素の効果に注目してきたのが野崎さんだ。ヨウ素には、のどから感染するウイルスをどれだけ殺菌できるかについての研究データがない。そこで、野崎さんは特定非営利活動法人バイオメディカルサイエンス研究会と共同研究を開始。インフルエンザやコロナウイルス、RSウイルスなど幅広いウイルスを殺菌することを突き止め、今年4月には学会誌に掲載された。研究成果について、耳鼻咽喉科の川本将浩医師は「ウイルスに対して殺菌効果を持つヨウ素を含むのど用薬剤などは、初期段階での対処や予防などに有用と考えられる」と指摘する。

 野崎さんは「ヨウ素の有用性について分かりやすく情報発信することで、殺菌・消毒にはヨウ素が一番と思ってもらえる未来を目指している」と意気込んでいる。(鈴木正行)

                  

 ≪焦点≫

 ■インバウンド需要、海外展開も視野

 小林製薬は海外事業を成長の4本柱の一つとして育てている。

 2019年までの中期経営計画によると、海外事業、通販事業、スキンケア事業、漢方事業を成長の柱としており、19年12月期の海外事業の売り上げ目標を16年12月期比約50%増の270億円に定める。

 主な海外事業の取り組みとしては、「熱さまシート」「アンメルツ」「カイロ」など主力商品の育成や、北米・中国を中心としたOTC医薬品事業の強化を掲げる。米国や中国の企業を相次いで買収し、それぞれの医薬品の承認書や販路を活用してOTC医薬品の育成に努める。

 また、インバウンド(訪日外国人観光客)の需要拡大にも注力する。これまで医薬品が中心だったが、日用品にまで広がっている。同社は「日用品の海外展開の絵も描けるようになってきた」と期待する。

 また、中国においては、インバウンド需要を通して同社の知名度が上がり、中国国内での店頭の売り上げや、インターネット通販の売り上げも拡大している。

 例えば、のどぬ~るの海外展開では、1999年に香港で発売されて以降、シンガポール、マレージア、タイと、東南アジアを中心に販売地域を拡大している。同社の海外OTC強化を受け、のどぬ~るの今後の展開が期待される。

                  

 ■小林製薬

 【設立】1919年8月22日

 【資本金】34億5000万円

 【本社】大阪市中央区道修町4-4-10

 【従業員】3033人(連結、2017年12月31日現在)

 【売上高】1567億円(17年12月期連結決算)

 【主な事業】医薬品、医薬部外品、芳香剤などの製造販売