「研究開発大国」イスラエルへ投資急増 日本企業

ニューロダームの研究開発現場=11月、イスラエル
ニューロダームの研究開発現場=11月、イスラエル【拡大】

 日本と、中東に位置するイスラエルとの間で民間投資が急拡大している。イスラエルの成長産業である医療・生命科学やサイバーセキュリティーなどのベンチャーに日本企業が投資し、イスラエル企業も日本企業との連携で世界進出を目指す動きが出ている。

 視力低下を引き起こす病気「加齢黄斑変性」の治療方法をイスラエルで研究開発しているベンチャー企業「セルキュア」は、日本企業との提携を模索している。同社は、日本市場への進出を図り、その後は世界で市場開拓を目指す方針だ。同社幹部は産経新聞の取材に対し、日本の医薬品企業と提携に向けた話し合いを進めていることを明らかにした。

 日イスラエル両政府の関係者を驚かせたのは、田辺三菱製薬が2017年にパーキンソン病など中枢神経系治療薬の研究開発を行うイスラエルのベンチャー企業「ニューロダーム」を約1240億円で買収したことだ。日本企業のイスラエル投資額は、13年の11億円から16年には約20倍の222億円にまで急拡大したが、田辺三菱製薬はそれを大きく上回る大規模投資を実施した。

 損害保険大手のSOMPOホールディングス(HD)は今年10月、自社のサービスや新事業に向けてイスラエルで開発される最先端技術を獲得するための現地法人を立ち上げた。同社は、米シリコンバレーで生み出される新技術の多くの要素がイスラエルで開発されていると分析し、同国を「世界有数のR&D(研究開発)大国」と位置付ける。

 日本企業がイスラエルに注目する背景には、米インテルやグーグルなど世界的企業が投資を進めていることだけでなく、起業家が“ヒーロー”と称され、次々と新技術を生み出そうとする文化的土壌がある。

 さらに、軍事的脅威にさらされる同国が培った防衛技術のノウハウが民間で生かされ、高いサイバーセキュリティー技術などを持っていることも大きい。

 イスラエルには車の自動運転関連技術の開発を行う企業も多く、同国外務省筋は「イスラエルを訪れる日本企業関係者は年々増えている」とさらなる投資拡大に期待を示している。(坂本一之)