秋田発 輝く

たかえん 調理用リンゴを全国へ、栽培農家に普及 (1/2ページ)

 秋田県横手市は、隣県の青森に勝るとも劣らないリンゴの産地。湯沢横手道路の十文字インターチェンジを降りた近くに「デリカテッセン&カフェテリア紅玉(こうぎょく)」はある。1階が地域の旬の食材を使った総菜と衣類や食材など生活雑貨を販売するデリカテッセン、2階が食事のできるカフェテリア。車でなければ行きにくい場所だが、常に女性や親子連れでにぎわう。「体に優しい、地域の旬の食材を楽しんで」と店長の高橋紅さん(46)は言う。

 ◆衣料品から飲食店へ

 運営するたかえんは、夫の基さん(50)が社長を務める。もとは1928(昭和3)年に秋田県の旧増田町(現在の横手市)で開業した茶店がルーツ、基さんが5代目に当たる。太平洋戦争後に基さんの祖父母が呉服業に転換、59年に旧十文字町の現住所に店舗を構え、基さんの生まれた68年に祖父の名前から屋号を「たかえん」とした。呉服のほか、衣料全般を扱っていた。

 紅さんは秋田県大潟村の出身。東京の大学を卒業後、大手企業の住宅部門に勤務したが、基さんとの結婚で家業を手伝うことになる。大学時代はヨット部に所属して部員の食事を作っていた。「自分の料理を食べて喜んでもらうのがうれしい」と、実家でシフォンケーキ事業の立ち上げに携わるなど食への関心は高かった。

 紅さんは「時代にあった商売をしたい」と、基さんに衣料品店を飲食店に転換するよう進言。「デリカテッセン&カフェテリア紅玉」が2008年に開店した。店名は義理の祖母の玉さんと、自分の名にちなんでつけた。「女性が輝く時代を引き継ぎたい。秋田の人たちは自分たちを卑下しがち。でも秋田には秋田の良さがある。良い素材に良い場所がたくさんある」。手間暇かけた総菜は、女性への応援歌。「家事や育児、仕事で忙しい女性たちを食でサポートしたい」。インテリアは、東京で住宅関連の仕事をしていた経験を生かし、居心地のよい空間を作り上げた。

 ◆「紅の夢」にかける

 一方、たかえんとして力を入れるのが調理用リンゴ「クッキングアップル」の普及だ。生食では酸味が強いものの、加熱すると香りが豊かになり、コクが引き立つ。アップルパイなどに使うと、飛びきりおいしくなるリンゴだ。「紅玉」が有名だが近年、注目が高まり、たかえんが使っているのが、実が薄いピンク色をした「紅の夢」。アントシアニンを含み、色鮮やかな演出ができる。「紅玉以上に風味が濃厚」と横手市の若手農家から薦められ、基さんが魅力に気がついた。周辺の7農家と契約し、全国の菓子店などに卸すほか、焼菓子やソースに加工して販売している。

 きっかけは11年1月、東日本大震災の2カ月前に県南部を襲った豪雪だった。横手市のリンゴ畑は雪に埋もれ、枝が折れて幹が裂け、傷んで切らなくてはならない状況だった。「大切な取引先のため何ができるか考え、クッキングアップルに、植え替えや接ぎ木をお願いした」と基さん。

 かつては日本でも酸味の強いリンゴが豊富にあったが、生食用の甘い「ふじ」などに押され姿を消していった。ただ生食用は調理用には向かない。全国のパティシエからクッキングアップルの需要は高まっていたものの、栽培農家が少なく入手困難になっていた。

 いまは全国の菓子店、パティシエから注文が届くようになり、今年は品薄にもなるほど成長している。(藤沢志穂子)

【会社概要】たかえん

 ▽本社=秋田県横手市十文字町字曙町6

 ▽デリカテッセン&カフェテリア紅玉=同梨木字沖野66-1 (0182・42・5770)

 ▽設立=1992年8月

 ▽従業員=18人(パート含む)

 ▽事業内容=総菜・焼菓子製造販売、弁当・仕出し

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