【道標】人権侵害許さぬ実習生制度運用を 特定技能2号、受け入れ分野拡大必要


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 政府は、25日の閣議で「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針」を決定した。改正入管難民法の国会審議で説明されてきた方針と大きく変わるものではないが、「悪質なブローカー規制がない」という批判を受けて、国内における取り組みとして法務省、厚生労働省をはじめ関係機関の連携強化による悪質な仲介業者(ブローカー)などの排除の徹底が打ち出されている。

 しかし、具体的内容は何も説明されておらず、決意表明以上のものではない。どういう法的根拠に基づいて、具体的にどういう取り締まりをするのかが全く分からない。また国外における取り組みとして、保証金を徴収するなどの悪質な業者の介在を防止するため、2国間取り決めといった、政府間文書作成など必要な方策を講じるとしているが、不十分である。

 現在、技能実習生は送り出し国において年収の何年分にも相当する多額の渡航前費用を送り出し機関に支払っており、しかも、これを借金によって調達している。これが、技能実習生が奴隷的労働に陥る原因の一つになっている。政府は、保証金や違約金は禁止しても、渡航前費用については規制をしようとしない。

 特定技能労働者についても、これを何も規制しない方針であることが明らかになった。特定技能労働者も多額の渡航前費用をブローカーに支払い、これを借金で調達し、来日後、借金を返済するため無理をして働かなければならず、問題があっても声を上げられない状況に陥る危険が大きい。

 特定技能労働者の転職支援については、ハローワークが希望条件、技術水準、日本語能力などを把握し適切に職業相談・紹介を実施することが明確にされた。これがしっかりとやられなければ、職場を移動する自由が形骸化することになるので、多言語での対応を含めて、しっかりとした態勢を準備してほしい。

 人手不足状況の変化への対応として関係閣僚会議では、分野別運用方針の見直し、在留資格認定証明書の交付の停止または特定産業分野を定める省令から当該分野の削除の措置を検討するとされている。その前提として、分野所管行政機関の長が、当該特定分野における人手不足の状況について継続的に把握し、状況に応じた必要な措置を講ずるという。

 この状況把握と判断を行政機関のみに任せず、各分野の公労使の代表者などからなる審議会を作って検討し、情報を公開するべきである。

 特定技能1号は家族帯同が許されず、通算で5年を上限とする在留資格であり、使い捨て的な受け入れである。特定技能2号は家族帯同が許され、在留期間の上限がないので、1号から2号への移行が認められることが望ましいが、今回、2号の基準を示したのは、建設と造船・舶用工業分野のみであった。他の分野も2号の受け入れを検討すべきである。

 今回の特定技能14業種には縫製業が入っていない。縫製業は多くの技能実習生を受け入れ、人権侵害などの問題事例が多い。特定技能労働者の受け入れは行わず、職場移動の自由のない技能実習生の受け入れを続けるということであろうか。

 法務省は、労働力確保目的の技能実習生は一切受け入れないという厳格な運用を行うべきである。

【プロフィル】指宿昭一

 いぶすき・しょういち 弁護士。1961年神奈川県生まれ。筑波大卒。2007年弁護士登録。日本労働弁護団常任幹事や外国人労働者弁護団代表などを務め、改正入管法の審議では、参考人として衆院法務委員会に招致された。