【2019 成長への展望】三井物産社長・安永竜夫さん(58)


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 ■ヘルスケアやモビリティーで好感触

 --世界経済の景況感は

 「慎重ながらも楽観的にみている。米国経済も減速はしているが、ファンダメンタルズは強い、米中関係の本題は貿易摩擦よりも知財や安全保障、技術をどう守るかで長期戦だ。ブラジルは昨年、極右とみられていたボルソナロ氏が新大統領に決まったが、経済政策は中道、現実的でビジネス環境が整った。経済は最悪期を脱し、自動車生産台数も戻りつつある。参画する旅客鉄道事業もパートナーを組み替えててこ入れする。アルゼンチンもペソ安の懸念材料はあるが、現政権の経済政策の下で商機が出てきている」

 --アルゼンチンでの具体的なビジネスは

 「まずは畜産や穀物の輸出から手掛け、輸出競争力強化に貢献する。昨年末に食料大手のレデスマと牛肉や豚肉輸出などで具体的な協力を進める覚書を結んだ。大豆カスなど穀物輸出は貿易保険も付け、パートナーは外貨を国内の輸送設備増強に回し、事業拡大の好循環につなげている。アルゼンチン南部での風力発電事業へも参画した。多くの人材を送る近隣ブラジルからカバーできる利点もあり、ビジネスを広げたい」

 --マレーシアの病院大手に約2300億円を追加出資した

 「パートナーの政府系ファンドのカザナとは6年間の共同運営で病床や企業価値などを3倍に引き上げた実績があり、株式譲渡を受け、経営に主体的に参加する。アジアのヘルスケア需要は年率10%増の成長分野で、IHHヘルスケアを通じインドや中国事業も拡大する。入院・外来患者のビッグデータを活用し、米国で参画するサプリメント事業やAI(人工知能)を使ったがん診断などの新技術をアジアにも導入し、相乗効果を生かす。未病対策や個人に合った高度な医療サービスの提供で、医療費の削減など社会課題解決に貢献する」

 --モビリティーや食と農も成長分野に位置付けた

 「市況に左右されない非資源を強化する計画は着実に進捗(しんちょく)し、次の成長の布石のモビリティーはCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の変化の真っただ中にあり、EV(電気自動車)関連・蓄電池事業への出資や日本企業とも組みシンガポールでのシェアリングの実証試験など、同時並行で新技術の取り込みを進めている。食料は、ブラジル集荷事業からの撤退で攻めの体制に転じる。同国の農業事業は、現地の農業生産会社とドローンやセンサーを活用して必要な場所だけに農薬や肥料を散布する先進農業で効率化を進める。他国にも横展開したい」

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【プロフィル】安永竜夫

 やすなが・たつお 東大工卒。1983年三井物産入社。経営企画部長を経て、2013年4月から執行役員機械・輸送システム本部長。15年4月から現職。愛媛県出身。