【2019 成長への展望】JXTGホールディングス社長・杉森務さん(63)


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 ■これ以上の統合は今は考えていない

 --2017年4月の誕生から今春で丸2年となる

 「変化が激しかった。政治や経済が大きく動き、資源価格も変動した。低炭素社会への注目度が高まり、人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながる『IoT』も進展している。10年、20年後を予測しづらくなっている。18年度中に、40年度を見据えた長期ビジョンを策定する。19年度には、20年度から始まる次期中期経営計画をつくらなければならないが、この中で長期ビジョンの実現に向けた施策を盛り込む」

 --これまでの統合効果をどう自己評価するか

 「順調に積み上がっており、ペースや金額は当初の目標を上回っている。旧JXホールディングスと旧東燃ゼネラル石油の経営統合後の施策決定が早かった。旧2社の施策にこだわることなく、経済性や合理性を軸に是々非々で判断し、新会社にとって何が良いかを考えてきた。供給面・製造面・購買面を中心に統合効果を積み上げてきたが、まだ生み出す余地はある」

 --国内の製油所・製造所網の最適なあり方は

 「統合効果には、製油所・製造所網の最適化の効果は織り込んでいない。石油需要が減る中で安定供給を果たしていく上では、供給能力を削減しながら競争力を高めていく必要がある。統廃合に限らず、ベトナム企業と共同運営に向けた検討を進めている山口県の麻里布製油所のようなやり方もある。能力削減策は立地地域への影響が大きいこともあり、急にはできない。30年あたりまでを見越しつつプランを考えている」

 --米国の対イラン制裁の再発動で、日本はイラン産原油の輸入に関して制裁の適用除外となった

 「原油の調達先を多様化することは重要で、主要産油国の一つであるイランとのパイプを失うべきではないという意味では良いことだ。(輸入再開は)準備ができ次第だ。何とか1月ぐらいからは再開できるのではないかという見込みだ。米国は適用除外の期間が最長180日間になるとしているが、日本政府には適用除外をずっと続けてほしいと既に要望している」

 --今年4月に同じ石油元売り大手の出光興産と昭和シェル石油が経営統合するが、自社への影響は

 「業界にとっては、競争力強化や安定供給という点で前進だ。一方、われわれは統合で2年先行し、統合効果も18年度に800億円を計画している。出光・昭シェルの統合で新たに何かをするわけでなく、われわれの統合効果を積み上げていくので影響は受けない。他社が何を考えているかは分からないが、われわれは現在の体制で十分に大きな統合効果をあげていけると考えており、これ以上の統合は今は考えていない」

【プロフィル】杉森務

 すぎもり・つとむ 一橋大商卒。1979年日本石油(現JXTGエネルギー)。JX日鉱日石エネルギー(同)社長、JXTGエネルギー社長を経て2018年6月から現職。石川県出身。