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電子マネー、アフリカに商機 高いスマホ普及率、投資回収可能に (2/2ページ)

商社が次々出資

 住友商事は、ケニアで太陽光発電システムのリース事業を行う「M-KOPA」に出資。丸紅は、東大発ベンチャーでアフリカで太陽光発電のリース事業を手掛けるワッシャ(東京都台東区)に出資し、タンザニアの事業に参画した。三菱商事は欧州企業と組み、西アフリカのコートジボワールで太陽光と蓄電池を貸し出す事業に、三井物産もインドのベンチャーと組みアフリカで太陽光を使った地産地消の事業に乗り出す。

 LPガスなどを販売するサイサン(さいたま市)も昨年、タンザニアのコパガスに資本参加した。LPガスボンベに搭載するスマートメーターを自社開発し、「ガスを利用した分だけ、電子決済で支払う」仕組みで、リスクを減らす考えだ。

 日本植物燃料(神奈川県小田原市)もモザンビークの無電化地域に電気を届ける事業から今後は、農業資材のプラットフォーム作りに乗り出す計画だ。

 こうした新潮流を踏まえ、日本貿易振興機構(ジェトロ)は今年2月にもアフリカベンチャーの中から100社を選定し、日本企業と現地のニーズをつなぐ、ビジネスマッチングの事業を強化する。さらに、8月には横浜市で開かれる第7回アフリカ開発会議(TICAD7)にもこれらの企業を招き橋渡しする。

 日本企業はBOP層の市場で苦戦していたが「アフリカのベンチャーが手掛ける新サービス(による電子マネー決済履歴など)を通じて(生活スタイルや好みなど)顧客情報を可視化し、新たな顧客層の開拓につなげられる」とみている。

 一方、あるベンチャー企業の経営者は、電子決済などデジタル技術を使ったインフラへの日本の政府開発援助(ODA)の活用を提案する。

 お手本は英国だ。英国はアフリカへの累積投資の最大国で、最近の経済援助の最大の成功事例はケニアの携帯電話大手、サファリコムが運営するモバイル送金サービスの「M-PESA」だという。ケニアでの同サービスの利用者は2300万人に達し、今では一大生活インフラにまで成長した。

 サファリコムには英通信大手のボーダフォンも出資するが、そもそもこのネットワーク構築の資金は英国の開発援助機関の国際開発省(DFID)が拠出。それを民間通信会社のボーダフォンが受け継ぎ、送金サービスの生活インフラとして定着させた経緯がある。「その先見性と民間企業活用型の好例には舌を巻く」と分析する。

 発展途上国のインフラ支援の定義も従来の道路や鉄道だけではなく、デジタル技術を使った生活インフラへと変わりつつある。日本のODAの仕組みも今後、時代に合わせて再考を迫られそうだ。(上原すみ子)

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