信楽焼 生き残りかけ進化 斬新デザイン続々 スタバと共同開発も

信楽焼販売額の推移
信楽焼販売額の推移【拡大】

  • 卯山製陶とスターバックスコーヒーがコラボレーションした「マグShigaraki」(スターバックスコーヒー提供)

 信楽焼(しがらきやき)の窯元が軒を連ねる滋賀県甲賀(こうか)市。今年秋には高度経済成長期の同市を舞台に女性陶芸家の半生を描くNHK連続テレビ小説「スカーレット」の放送が始まる。信楽焼といえばタヌキの置物が有名だが、近年は斬新なデザインの陶器が相次いで登場。時代の変化に対応しながら生き残りを図っている。(清水更沙)

■新ジャンル開拓で

 「信楽焼は日用品の生産に徹底している。時代のニーズによって作るものは全く違う。そうしなければ廃れてしまう」

 窯元らでつくる信楽陶器工業協同組合の橋本浩参事(48)はこう説明する。

 奈良時代に誕生したとされる信楽焼。歩んできた道は平らではなかった。明治時代から約100年間、主として火鉢を生産していたが、電気やガスの暖房器具の登場によって昭和30年代後半には生産が途絶えた。火鉢作りの技術を応用して植木鉢作りに乗り出すも安価なプラスチック製鉢の出現で衰退。変わりゆく生活様式に翻弄されながらもガーデンテーブルや手水(ちょうず)鉢などのインテリア用品に活路を見いだしてきた。

 そんな現在も逆風にさらされている。同組合によると、平成4年に約170億円だった信楽焼の販売額は29年には4分の1以下の約34億円に減少。各窯元は生き残りをかけ、工夫を凝らした陶器を打ち出している。

■斬新なデザイン

 「丸滋(まるし)製陶」は26年から琵琶湖周辺の職人らと立ち上げたブランド「KIKOF(キコフ)」の商品として、有名デザイナーらと共同開発した八角形が重なったポットやとっくりを販売。信楽焼特有の土のぬくもりを残しながら斬新なデザインが反響を呼んでいる。

 同社の今井智一社長(50)は「信楽焼の職人はその時代に何が求められているかというアンテナを張ってきた。これからもそれは変わらない」と話す。

 甲賀市の「スターバックスコーヒー甲賀水口(みなくち)店」は、29年から「卯山(うざん)製陶」の職人と共同開発したマグカップでコーヒーを提供している。タヌキの腹をイメージした丸い器が特徴で、コーヒーの香りが際立つように焼き具合や素材にこだわった。カップの販売もしており、人気を集めている。

■旅館の浴槽も

 温泉施設や旅館に向けた信楽焼の浴槽を製造している「三彩(さんさい)」の上田和弘会長(80)は「産業の根本的な構造を変えていくことも、そろそろ考えねばならない時にきている」と指摘する。

 三彩では作業の効率化を図り、3Dプリンターなどの最新機器を取り入れているといい、上田会長は「手作りにこだわることはもちろん大事だが、後継者不足などの問題が押し寄せている中で、最善の手を打ち出していかなければ存続は難しくなる」と話している。

 信楽焼 聖武天皇の紫香楽宮(しがらきのみや)造営に伴って作られ始めたとされ、素朴な土の風合いが特徴の陶器。安土・桃山時代には「侘(わび)茶」の普及から茶陶器が、江戸時代には茶碗(ちゃわん)や土鍋などの日用雑器の生産が盛んとなる。平成29年度には日本六古窯(ろっこよう)のひとつとして文化庁の日本遺産に登録された。