【中小企業へのエール】狛犬と獅子 阿吽の呼吸で権力を守る仕組み

 □旭川大学客員教授・増山壽一

 「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」

 英国のジョン・アクトンという歴史上の政治家の言葉として極めて有名だ。

 「人類はこの経験を踏まえて、必ず権力の傍らに、それを守り、そして監視する仕組みを作ったのです。民主主義の三権分立もその一つの仕組みです。三権が相互に緊張感をもってチェックをしていく、特に行政に対してチェック機能を果たさなければならない」

 いかにも、アングロサクソン・モデル的分析だが、昨今、行政と政治の在り方がしばしば言及されている。

 米英型思想がそのまま本当に日本にしっくり当てはまるのか、そんなことを思って寺院や神社に参拝すると「狛(こま)犬」や「獅子」が神殿を守っているのを目にする。インドのサンスクリット文化に端を発し、中国や韓国を経由して日本に渡来した。

 神殿の権力を守るために、左右に控える「狛犬と獅子」の役割を考えてみたい。

 権力の中枢である神殿は、ある意味「空」。そして無防備だ。従って、従者が守らないといけない。その役割が、狛犬と獅子だ。

 神殿から見て右側(参拝者から見て左側)の角があるのが狛犬、左側の角がないのが獅子というのが正式のようだ。また、口を開いているのが「阿吽(あうん)」の「阿形(あぎょう)」で、閉じているのが「吽形(うんぎょう)」という。両者そろって阿吽となり、朝から夜まで、しっかり違う角度から、違う目で神殿を守っている。

 権力とは何か、守るためにどうすればいいのか。そのための先人たちの知恵が隠されているように思えてならない。

 権力はまず「空」でなければならず、全ての人が信頼し相談しやすい存在でなければならない。それゆえに危うい。従って、それを守る仕組みが必要になる。それが狛犬と獅子なのだ。

 違うタイプの、違う目をもった“側近”が、片方は口を開け、片方は口を閉じ、昼夜を問わずまさしく“阿吽の呼吸”で、しかも権力者に背を向けて見守っている。

 安倍晋三政権の成し遂げた大きな成果を行政のスキャンダルで無駄にしないために、また、行政の信頼を回復するために、狛犬と獅子の役割を見直していくことが必要ではないか。(隔週掲載)

【プロフィル】増山壽一

 ますやま・としかず 東大法卒。1985年通産省(現・経産省)入省。産業政策、エネルギー政策、通商政策、地域政策などのポストを経て、2012年北海道経産局長。14年中小企業基盤整備機構筆頭理事。17年4月から旭川大客員教授。日本経済を強くしなやかにする会代表。56歳。