高論卓説

重くのしかかる国民税負担 盛り上がり欠く消費の要因に

 国民所得に占める税と社会保障負担の割合を示す「国民負担率」の統計を財務省が公表した。最新の実績値である2017年度は42.9%と、前年度を0.1%上回り過去最高を更新した。国民負担率が前年度を上回るのは7年連続、過去最高の更新は6年連続だ。

 国民負担率は分母に「国民所得」、分子に国税地方税などの「税負担」と年金保険料などの「社会保障負担」を置く。17年度の国民所得は404.2兆円と、前年度に比べて13兆円、率にして3.3%増加したが、税負担がそれを上回る増加になったため、負担率が上昇した。

 国民所得に対する「税負担」の割合は25.3%、「社会保障負担」は17.6%に達する。社会保障負担は前年度に比べて0.1ポイント低下したが、それまで上がり続けてきた厚生年金保険料率が17年9月で頭打ちになったことなどが影響したとみられる。

 国民の多くはすっかり忘れているが、厚生年金の保険料率は05年から毎年9月に引き上げられてきた。給与袋を開くたびに、厚生年金の天引き額が増えているという感覚を持ってきた人もいるに違いない。

 04年9月に基準給与の13.58%(半分は会社負担)だった保険料率は、17年9月には18.3%にまで上昇。13年で4.72%も引き上げられた。基準給与を仮に600万円とすればこれだけで、28万円余りも負担が増えたことになる。加えて、健康保険料も毎年のように上がってきた。

 第2次安倍晋三内閣が発足した12年度と17年度を比較すると、国民所得は44.4兆円増えた。アベノミクスによる企業収益の回復などが大きく貢献した。ところが、この間、国民負担率は39.7%から42.9%に上昇しているのだ。逆算すると30.6兆円も国民負担が増えたことになる。

 社会保障負担が17.0%から17.6%に上昇したこともあるが、消費増税の影響などで、国税と地方税を合わせた租税負担が22.7%から25.3%に大幅にアップした。

 景気が良くなっているようで、国民の税負担率は大きく上昇しているわけだ。可処分所得が思うように増えておらず、それでは消費が盛り上がるはずはない。国会で議論されているように実質賃金が増えていないという問題もあるが、税負担が重くのしかかっているという問題も無視できない。

 そんな中で今年10月から消費税率がさらに引き上げられる。8%から10%になるので、当然、国民負担は増える。ところがこのほど財務省が発表した19年度の国民負担率の「見通し」は42.8%と17年度よりも低下するとしているのだ。この3月末で終わる18年度の「実績見込み」も42.8%で、それと比べた場合は、横ばいになるとしている。増税しても好景気で所得が増えるから、負担率はむしろ下がるというのである。

 もっともこの統計。「いわく付き」なものとして知られている。「見通し」どころか、1カ月ほどで締まる年度の「実績見込み」も、当たったためしがないのである。負担が下がる、あるいは横ばいだという発表を毎回のように出しながら、過去最高を更新し続けている。国民所得を大きく見積もれば、国民負担率は低く出るから、見通しを低くするのは簡単である。統計偽装の温床はこんなところにも垣間見える。

【プロフィル】磯山友幸

 いそやま・ともゆき ジャーナリスト。早大政経卒。日本経済新聞社で24年間記者を務め2011年に独立。

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