高論卓説

デジタル戦略実現の新年度 方向性共有に密な社内対話が不可欠 (2/2ページ)

 「弊社の中間管理職はデジタルに対する感度は鈍い」という話を聞くことがある。仮にそうだとすると、それはトップの責任だ。実際に事業や業務に従事する人に伝わっていないのであれば何も起きようがない。「話が通じない」と諦めているようでは、デジタル武装を進めることなど無理だ。

 社員に対して一方的に話すだけでは十分ではない。例えば、部署別に伝道師を立て、その人たちが理解する。伝道師が各部署と議論する。各現場から上げられた疑問点は集約して経営から回答を出す。

 こういった仕掛けを作っても、機能しないケースが散見される。「言葉では理解できたが、結局何をするのか分からない」という「仏作って魂入れず」の状態に陥る。きれいな言葉で飾るのではなく、現場が腹落ちする具体的な内容になっているかを検証した方がよい。

 変革には大きな労力を要する。経営は「早く進めたい」という気持ちにもなるだろう。だが、経営のイメージする「デジタル」と、現場の考える「デジタル」の距離があるようでは、新年度中に実現することは難しい。

【プロフィル】小塚裕史

 こづか・ひろし ビジネス・コンサルタント。京大大学院工学科修了。野村総合研究所、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ベイカレント・コンサルティングなどを経て、2019年1月にデジタル・コネクトを設立し、代表取締役に就任。主な著書に『デジタル・トランスフォーメーションの実際』(日経BP社)。兵庫県出身。

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