【成長への挑戦 熊谷組の120年】(5-1)老舗ゼネコンが描く未来 (1/2ページ)

現場パトロール中の櫻野泰則社長(左)
現場パトロール中の櫻野泰則社長(左)【拡大】

  • トンネル工事の様子。従来からの建設工事請負事業の維持・拡大などの本業強化も進める
  • 唱谷トンネル。熊谷組はこうした土木工事に強みを持つ

 熊谷組は、120年を超える歴史のなかで数々の難工事に挑み、成果を上げてきた。1956年に受注した黒部川第四発電所大町トンネルの掘削工事は、大量の地下水ともろい破砕帯に阻まれ、突破まで7カ月を要した難工事として知られる。その苦闘は映画「黒部の太陽」で克明に描かれるなど、今も語り草となっている。バブル崩壊後の苦しい時期を乗り越えた今、同社は利益体質を確立しつつあり、再び成長軌道を描こうとしている。建設市場は今後も変動が予想される中、どう持続的な成長を図るのか。熊谷組の成長戦略に注目が集まっている。

成長支える3本柱

 熊谷組は2018年3月、新しい中期経営計画(2018~2020年度)を発表した。計画のテーマは「成長への挑戦」とし、目標達成の戦略として(1)建設工事請負事業の維持・拡大(2)新たな事業の創出(3)他社との戦略的連携を3本柱に据えた。2020年度の連結売上高を2017年度実績比約23%増の4600億円、営業利益を同約43%増の330億円を見込む。中計に先立って策定された中長期経営方針では、2022年度に売上高5000億円、営業利益500億円を目指すという。

 90年代から2000年代初頭まで、同社にとっては過去に例のないほど試練の季節となった。バブル期の過剰投資、不動産開発など経営の多角化戦略も裏目となり、経営危機に陥った。同社は、主要取引金融機関から2001年と2003年の二度にわたり債務免除を受け、さらに約300億円分の優先株を引き受けてもらうことで企業の存続を果たした。その後も公共事業の縮小や景気低迷に苦しんだが、自然災害の拡大などを受け、政府は国土強靱(きょうじん)化へかじを切るるようになった。さらに第二次安倍晋三内閣発足後の一連の経済政策「アベノミクス」に伴う民間投資の増加も追い風となり、経営危機を脱した形だ。

 2014年には支援金融機関向けに発行した優先株すべての消却を完了した。その後に策定した2015年から17年度末まで中計では、「『再生』から『成長』に向けての安定した収益力の確保」を経営目標に掲げ、もはや再建途上ではないとの姿勢を強調した。果たして2017年度には売上高3740億円、営業利益230億円となり、中計で掲げた連結営業利益率4%以上の常態化(2015年度実績7.1%、16年度7.3%、17年度6.2%)、ROE(株主資本利益率)10%以上(17年度実績15.3%)という目標を大幅に上回った。

 「成長への挑戦」を掲げた今回の中計では、まず従来の建設工事請負事業の維持・拡大をあげ、創業120年の実績に裏打ちされた本業強化に自信を示した。同社はこれまでいくつもの難工事を完成させ、技術力には定評がある。今後はITや人工知能(AI)などを活用しながら現場の生産性向上を図ることが課題だという。現場の労働環境改善と同時に競争力をいかに強化するか、取り組みが注目される。建設請負だけでなく、保守や施設運営なども含む一括請負を増やすなど、単純な価格競争から脱する取り組みも加速しそうだ。

 そんな中計で示された成長の第2の柱が「新たな事業の創出」だ。同社は中計の3年間で600億円規模の成長投資を予定している。技術開発や再生可能エネルギーなどへの投資、新製品、サービスの外販収入への期待は大きい。また、バブル崩壊後に事実上撤退を余儀なくされた海外事業への再参入なども新事業に含まれるという。

住友林業との提携