米中協議の陰で忍び寄る“隔離” 企業も「安保・経済の一体化」に直面 (3/3ページ)

ホワイトハウスでトランプ米大統領(奥)と米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表(右)と会談する中国の劉鶴副首相=2月22日(ロイター)
ホワイトハウスでトランプ米大統領(奥)と米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表(右)と会談する中国の劉鶴副首相=2月22日(ロイター)【拡大】

  • スペインで開かれた携帯通信関連の見本市モバイル・ワールド・コングレスでの華為技術のブース=2月27日(ロイター)
  • 米インディアナ州で収穫された大豆。中国は大豆など米国産農産品の大量購入などでトランプ政権との和解を狙っている(AP)

 米中協議の最中にも、華為排除の包囲網のために東欧などに働きかける米国と、その包囲網を崩すためにオーストラリア、ニュージーランドを揺さぶる中国の激しいせめぎ合いが繰り広げられている。さらに米国は華為に対し、「調達から排除する」だけでなく、「部材の供給を遮断する」準備も進めている。具体的には、輸出管理による規制だ。「買わない」「使わない」から「売らない」「作らせない」へと発展する。

 最近、ワシントンでしばしば耳にする言葉が「隔離」だ。かつての米ソ冷戦期と違って、経済がグローバル化している今日、かつてのような経済全般を分断する「鉄のカーテン」は非現実的だ。しかし安全保障の機微に関わるハイテク分野では、供給網が二分される恐れはあるのだ。

 その際、米国にとって不可欠なのは同盟国の協力だ。日本にとってもひとごとではない。華為は日本の部材メーカーにとっても重要顧客であり、難しい対応を迫られることになる。少なくとも米国から「漁夫の利」とみられることのないよう慎重さが求められる。

 日本は日米安保の下で、安全保障面での米国依存が宿命で、ある意味、日本もくびきから逃れられない。今や経済と安保が一体化して議論される状況になってきた。そうした中、企業も白黒がはっきりしない難しい経営判断を迫られる。

 トランプ氏のドラマ仕立ての貿易協議にばかり目を奪われていてはいけない。もっと米国の本質的な部分では着実に対中技術封鎖の動きが進展していることを見逃してはならない。日本企業も経営リスクとしての備えが急務になっている。