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通年採用拡大 人材獲得競争激化、中小に危機感 (1/2ページ)

 専門人材を中心に通年採用の拡大促進を盛り込んだ経団連と大学による産学協議会の中間報告。既に通年採用に着手している企業からは経団連からの“追認”に歓迎の声が聞かれる一方、大手への人材集中が進むとの見方から中小企業からは強い危機感がにじむほか、就職活動時期のさらなる早期化・長期化を懸念する声も聞かれた。

 「世の中の流れに沿っている」。生命保険協会の稲垣精二会長(第一生命保険社長)は会見で、通年採用拡大に前向きな姿勢を示した。キヤノンの田中稔三副社長も「多様な人材獲得には悪くない」とした上で、「そういう人材を採らないと生き残れないというのが本音」と吐露する。

 念頭にあるのは、ビジネスのグローバル化、デジタル化に対応する人材獲得競争の激しさだ。海外のIT大手などとエンジニア採用にしのぎを削るヤフーは2018年4月入社の採用活動から通年採用を導入。「大学院生からは研究や論文作成に専念できると好評を得ている。動画面接などでコストも高くない」とメリットを強調する。

 一方、中小企業の採用活動には影響が出そうだ。機能性衣料を開発するミツフジ(京都府精華町)の三寺歩社長は「学生の多くが大企業に流れるのでは」と懸念する。油圧機器製造の今野製作所(東京都足立区)も「ここで働きたいと思える魅力を打ち出さないと」(今野浩好社長)と危機感を口にする。

 ただ、経団連と大学側から“お墨付き”を得た通年採用は導入が進みそうだ。日立製作所は「これまでも一部で行っていたが、割合が大きくなる」。西武ホールディングスも留学生や海外人材を採用しやすいとして検討に入る。ただ、導入に向けては「企業としての魅力がないと」(シャープ)「1、2年生から企業PRしないと」(NEC)など課題を指摘する声も上がった。

 リクルートキャリア就職みらい研究所の増本全所長は「一括採用にも利点があったが、グローバル競争が多様化を後押ししている。今後は企業が採用情報をどう学生に伝えるか、学生もどんな能力を磨くかが重要になる」と話している。

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