ただ、メリットがたくさんある半面で、まだまだ問題も山積している。というのも、遺伝子検査から適切な分子標的薬を見極めることができる医師はまだそんなに多くない。加えて、100以上のタンパク質の突然変異を調べても、それに対応する分子標的薬はまだまだそろっていない。仮に使える抗がん剤が見つかったとしても、保険未承認であった場合、治験や自費診療になってしまう。抗がん剤ではあるので、いつかはがんがその薬に対する耐性を持ち、効果がなくなってしまう。つまり、現状では、根本的な解決にはつながらないことにもなる。
とはいえ、従来のがん治療から劇的に変わり、患者のメリットが多くなるという点は大きい。調べるタンパク質の突然変異に対して、日本や世界の製薬会社はこぞってそのタンパク質をターゲットとした分子標的薬の開発に乗り出している。ここ20~30年で、原発不明がんや希少がんを含め、使える抗がん剤がないということがない時代になるだろう。
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【プロフィル】竹内規夫
たけうち・のりお 1978年、和歌山県生まれ。がん治療コンサルタント。2008年ごろから、がん患者をサポートする活動を開始。16年、がん治療専門のコンサルタントが、患者をサポートするGMSを設立し、社長に就任。