ボストン郊外の公共駐車場ではゲートがなく、駐車料金は自己申告制になっていた。駐車場の真ん中にある小さな精算機に、車のナンバーを入力して、自分で1時間と入力する。すると料金は1ドル50セントと出たが、これもカード決済である。
ニューヨークではNYCフェリーという、新しくできた船会社が便利だが、これも事前登録して乗船時にスマートフォンをワンクリックするだけである。かくして札クリップに数十ドル分の紙幣を挟んでいたが、ホテルでのチップ以外に利用する場所はとうとうなかった。したがってポケットに小銭がたまるということもなくなってしまった。
さて、こういう話を日本ですると米国は進んでいるなと感心する人も多い。しかしウーバーのサービスが普及していないことを除けば、実はやり方次第で日本でも事情はあまり変わらない。
筆者はスイカを内蔵したアップルウオッチを使っている。先日、在来線→新幹線→名古屋地下鉄を利用した出張があった。新幹線は「EX」で予約したのでチケットレスである。駅弁を買い、立ち食いきしめんまで食べたが、家を出て以降、財布どころかスマホまでかばんから出すことはなかった。コンビニエンスストアではスイカなど交通系カードが使えるし、最近はクレジットカード決済も5秒もあればできる。ポケットをじゃらじゃらと小銭を探っているよりも早いので、少額なので店に迷惑などということはもはやない。つまりキャッシュレス化は日本でもやればできるのだ。
ちなみにニューヨークではデジタルデバイド(情報格差)が進み、信用やデジタルリテラシー(知識)がない低所得者層には相変わらず現金が必要なのである。
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【プロフィル】板谷敏彦
いたや・としひこ 作家。関西学院大経卒。内外大手証券会社を経て日本版ヘッジファンドを創設。兵庫県出身。著書は『日露戦争、資金調達の戦い』(新潮社)『日本人のための第一次世界大戦史』(毎日新聞出版)など。